研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04112
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
燒山 佑美 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60636819)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 分子性結晶 / ホストゲスト相互作用 / 結晶-結晶構造変化 / 一次元チャネル構造 / 分子配向制御 / 誘電率 / 一次元構造 / 刺激応答性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、バタフライ型分子であるインダンジオン二量体を基本骨格として、これらが構築する「劇的な構造変化が可能なやわらかい結晶」がもつ二種類の超秩序構造、すなわち構造変化過程で現れる「結晶/アモルファス」境界、そして結晶中に存在する一次元チャネル内部に生じる「空隙」、の詳細解明および機能化に挑戦する。純有機物からなる超秩序構造を積極的に作り出し、実験的にその構造・機能の解明と応用化を図ることで、有機物結晶をベースとした基礎・応用研究の発展に大きく貢献する。
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研究実績の概要 |
有機結晶材料における超秩序構造は、空孔・空隙を有するホスト結晶におけるゲスト分子の分布・配向のディスオーダーや、固溶体内部における分子配列の無秩序性に見いだすことができる。これら「超秩序有機結晶」における分子配向の変化は、顕著な物性の変化をもたらすことから、その詳細な構造解析は極めて重要である。しかしながら、一般的な単結晶X線結晶構造解析では平均化された構造が得られるため、その多くにおいては局所構造情報を得ることができず、構造・物性創刊をとることが困難である。本研究では、第一期公募研究に引き続き、バタフライ型分子インダンジオン二量体類が結晶中で構築する超秩序構造 (特にピリジン導入体4PIDが形成する1次元チャネル含有"OPEN"構造) に加え、新たな超秩序構造として、フッ素含有曲面π共役分子モノフルオロスマネンの1次元積層型構造を見いだし、これらがもたらす機能・物性変化への理解を目指して検討を行ってきた。その結果、4PIDのOPEN構造が、ゲスト脱離後も極めて短時間であるが細孔性を維持することや、ゲスト分子の導入によってホスト骨格の電子状態が変化し、ヒステリシスを伴った構造変化を示すことも明らかとなった。加えて、曲面構造を持つモノフルオロスマネン (FS) においては、種々の結晶化溶媒を用いることで、一次元積層構造内におけるフッ素配向を様々に変化させることができ、結果として単一分子のみを用いてフッ素配向性に応じε<10から数万に至る範囲での劇的な誘電率の発現が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、バタフライ型分子インダンジオン二量体類が結晶中で構築する超秩序構造 (特に1次元チャネルを持つ"OPEN"構造) に加え、新たにフッ素含有曲面π共役分子モノフルオロスマネンの1次元積層型構造が ”Disorder in Order” としての役割を担っていることを見いだし、その機能に関しての詳細な検討を行った。 SPring-8 BL04B2およびBL02B2にて測定したピリジン置換インダンジオン二量体4PIDのOPEN・CLOSE構造の回折データを元に、加熱プロセスにおける簡約二体分布関数の時分割データを取得した。その結果、60分加熱に対応するデータにおいて、ヘキサン脱離に伴う構造変化の中間状態ともいえる構造情報の取得に成功し、OPEN-CLOSE構造変化の可逆性を制御するうえで重要な知見を得ることができた。 また、SPring-8 BL43IRにて4PIDのヘキサン含有OPEN結晶について、クライオスタットを利用した顕微下でのその場CO2吸着実験を行った。その結果、195 K、減圧状態からCO2を導入した直後から1800~1700 cm付近のインダンジオン骨格部分のC=O伸縮、および1600~1400 cm付近の芳香環C=C伸縮振動に由来するピーク強度の変化や先鋭化が観測され、チャネル内部へのCO2の導入によりホスト骨格の電子状態の変化が示唆された。加えて、CO2導入による構造変化がヒステリシスを伴っていることも明らかとなった。 さらに、曲面構造を持つモノフルオロスマネン (FS) においては、種々の結晶化溶媒を用いることで、一次元積層構造内におけるフッ素配向を様々に変化させることができ、結果としてフッ素配向性に応じて劇的に異なる誘電特性の発現が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究を通じて、第一期公募研究の内容をさらに発展させ、論文化へ向けての体制が整えるとともに、新たな超秩序構造を持つ分子系の確立に成功した。2024年度はこの成果を基盤に、OPEN-CLOSE構造変化過程やフルオロスマネン結晶における1次元構造内でのフッ素配向についての詳細な情報や、OPEN構造内への分子吸着に関する情報について、より詳細な分析を行い、年度内での論文発表を進めていきたいと考えている。
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