研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04133
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 隆宏 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10722829)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
|
キーワード | 生体組織光学 / 屈折率分布 / トポロジカル解析 / 光学特性 |
研究開始時の研究の概要 |
生体内の光伝搬計算には,組織を微小球粒子が均質に分布した屈折率分布と仮定し,吸収・散乱係数により記述される多重散乱に基づくモデルが広く利用されている.しかし,組織の微視的な不均質性や光の波動性が考慮されておらず,既存の光伝搬計算に基づく解析による空間分解能は組織スケール(mm-cm)にとどまっている.本研究は,組織の不均質な屈折率分布に対して,トポロジカル解析に基づく光学構造表現を確立し,生体の散乱透視における有効性を明らかにすることを目的とする.蛍光内視鏡診断で課題となる粘膜組織2mm深さ程度での細胞スケールのイメージングを達成し,本手法の有効性を検証する.
|
研究実績の概要 |
本研究では,組織の微視的な不均質性を反映する屈折率分布の表現手法を確立し,波動性を考慮した光伝搬モデルを構築する.さらに,新規光学構造表現を活用した生体の散乱透視技術の有 効性を明らかにすることを目的として実施した.組織の不均質な屈折率分布の定量化にはトポロジカル解析法を適用する.対象のもつ微視的構造の特徴をトポロジカル記述子を用いて表現し,ランダムに屈折率分布を生成することにより,不均質で不規則でありながら組織の特徴的な屈折率分布を有する光学構造データベースを構築できるか検証する.また,データベースを活用して,細胞スケールの空間分解能のイメージングに向けた深層学習モデルを構築する. 本年度は,不均質な屈折率媒体の光学構造をパーシステントホモロジー解析によって定量化されたデータから同様の性質を有する散乱体の光学構造を生成できることを確認した. 屈折率の異なる微粒子を密度を変更させたり,クラスター状に分布を有する媒体を生成し,ビーム伝搬法を用いて光伝搬の特性を評価した.一様な屈折率場との比較から,ビームの歪みや重心などの変異が,屈折率媒体のパーシステント図の分類に依存して分類できることが示唆された.また,Generative Adversarial Networks(GANs)を用いた光学構造の生成手法により、パーシステント図によって定義された特定の光学構造をランダムに生成できることを示した.GAN生成手法は、不均一で不規則な屈折率分布を生成できることが示唆された.以上から,パーシステント解析による光学構造の定義の可能性を検証し,実際の生体組織への適用に向けた基礎技術を構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体組織のトポロジカル解析に必要な技術の整備が完了し,簡易モデルでの評価が完了したため.
|
今後の研究の推進方策 |
光伝搬のシミュレーション結果を実際の光学実験結果と比較評価する.集光スポットの歪みやスペックル粒度のサイズなどの光分布の特徴を評価する.レーザー光を組織へ照射した際に生じる ビーム重心の歪みや光スペックルパターンの特徴が再現で きることを実証する.さらには,散乱・吸収係数 との関係を,透過率,拡散反射率のシミュレーションと実測値から比較して,本モデルが有効となるサイズ領域を明らかにする. 続いて,胃粘膜組織の腫瘍病変イメージングに向けて,新規光学特性に基づく光伝搬計算モデルにより生成した学習データセットを用いて深層学習モデルを構築する.既存の吸収・散乱係数の光伝搬モデルによる学習により得られる 0.5mm の深さ分解能と比較して,深さ分解能が向上することを実証する. これにより,提案する光学構造の表現手法とそれに基づく深層学習による散乱透視手法の有効性を明らかにする.
|