研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
23H04156
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
新明 洋平 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00418831)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | アストロサイト / フェレット / 皺脳動物 / アストロサイト選 |
研究開始時の研究の概要 |
進化における白質アストロサイトの数の増加や形態の多様化が高次脳機能獲得に重要であったことが示唆されるが、それらの分子機構や機能的意義については全く分かっていない。そこで本研究課題では、申請者らが独自に開発してきたフェレットでの解析技術を用いて、白質アストロサイトの肥大化と形態の多様化の分子機構を明らかにする。さらに、進化におけるアストロサイトの変化の機能的意義を解明することにより、複雑化した脳におけるアストロサイトのデコーディングを目指す。
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研究実績の概要 |
哺乳動物の進化の過程で大脳は肥大化し、その表面には明瞭なシワ(脳回)を獲得するなどその構造は複雑化してきた。この進化の過程で、神経細胞に加えてグリア細胞の数は著しく増加するとともに、その形態と機能も発達してきた。例えば、ヒトのアストロサイトを移植したマウスでは記憶・学習能力が向上する。さらに、マウスに比べてヒトでは白質アストロサイトのサイズが大きくなっているとともに、その形態が多様化している。このように、進化における白質アストロサイトの数の増加と形態の多様化が高次脳機能の発達に重要であったと考えられる。従って、皺脳動物(脳回など発達した脳構造を持つ動物)でのアストロサイト研究は重要であるが、解析技術が確立されていなかったこともありその研究は遅れている。本研究では、私たちが独自に開発した技術、皺脳動物であるフェレットの大脳皮質におけるアストロサイト選択的な遺伝子発現システムを利用して、フェレットのアストロサイトの解析を行なった。その結果、マウスに比べてフェレットの白質アストロサイトのサイズが大きいこと、ヒト白質に見られるアストロサイトの形態的多様性がフェレットにも存在することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していたアストロサイトの形態的解析を終了することができた。実際、マウスに比べてフェレットの白質アストロサイトのサイズが大きいこと、ヒト白質に見られるアストロサイトの形態的多様性がフェレットにも存在することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
①白質アストロサイトにおける網羅的な遺伝子発現解析 フェレットアストロサイトの肥大化と形態の多様化に関わる候補遺伝子を絞り込む。フェレットに比べてマウスの白質アストロサイトは小さく単純な形態をしていることから、両者の遺伝子発現を比較することにより形態制御に関わる候補分子を探索する。申請者らは既に、フェレットとマウスの大脳由来のアストロサイトを用いて、RNA-Seq解析による網羅的な遺伝子発現の比較解析を行い、マウスに比べてフェレットで発現が高い遺伝子を複数見いだしている。今後、定量的発現解析が可能であるRNAscope in situ hybridization法を用いてフェレットとマウスの白質アストロサイト(蛍光標識)における候補遺伝子の発現を調べることにより、フェレットの白質アストロサイトに共通して高く発現する分子と各サブタイプに特徴的な発現を持つ分子を絞り込む。
②白質アストロサイトの肥大化と形態の多様化の分子機構の解析 上記で絞り込んだ候補遺伝子が、白質アストロサイトの形態制御に重要であるかを検証する。マウスとフェレットアストロサイトの初代培養系を用いて、候補遺伝子の過剰発現およびCRISPR/Cas9によるノックアウトを行い、アストロサイトの肥大化に関与する分子を同定する。また、申請者らが独自に開発したフェレット大脳のアストロサイトでの遺伝子操作技術を用いて、白質アストロサイトの形態の多様化に関わる分子を同定する。具体的には、フェレット大脳のアストロサイトにおいて候補遺伝子の過剰発現もしくは遺伝子ノックアウトを行い、アストロサイトの形態への影響を調べる。このように、in vitroの実験系とin vivoの実験系を有効的に組みわせることにより、白質アストロサイトの肥大化と形態の多様化の分子機構を明らかにする。
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