研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
23H04159
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
福田 敦夫 浜松医科大学, 医学部, 特命研究教授 (50254272)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
|
キーワード | NKCC1 / アストロサイト / GABA / てんかん / KCC2 |
研究開始時の研究の概要 |
GABAシナプス機能におけるアストロサイトの役割を根本的に見直し、GABAシナプス伝達においてCl-ホメオダイナミクスを介して極めて重要な何らかの能動的機能を持つと考え、 GABAシナプス間隙へのCl-補填などClホメオダイナミクスと、GABAの合成/放出/取り込みなど、ニューロンへの能動的関与でGABA作動性抑制性シナプス機能にどのような変化をもたらすのかを明らかにする。すなわち、アストロサイトによるシナプス間隙への細胞外Cl-の補填による神経細胞のCl-電気化学勾配の維持機構と、GABA合成とシナプス後細胞への放出機構のデコーディングを提案する。
|
研究実績の概要 |
1.GABAシナプス伝達の興奮転化へのアストロサイトNKCC1関与の証明:アストロサイト選択的にNKCC1を消去したALDH1L1-Cre::NKCC1-flox/floxマウスを用い、アストロサイトのGABA応答が細胞内Cl-濃度上昇であること、すなわちアストロがシナプス間隙へCl-を供給できないことを確認した。このとき、錐体細胞でのGABA作用逆転による後発射の閾値は低下し持続は延長した。アストロサイトのNKCC1がニューロンのCl-ホメオダイナミクスに能動的に働くことを証明した。 2. てんかん原性獲得モデルにおけるアストロサイトNKCC1の生理病態機能解析:ALDH1L1-Cre::NKCC1-flox/floxマウスでピロカルピン腹腔内投与による急性てんかんモデルを作成した。けいれん発作の潜時は有意に短縮し、また、けいれん重積や死亡等の発作重篤度も増し、明らかな易けいれん性を呈していた。アストロサイトのNKCC1がけいれん発作の抑制に働いていることを証明した。 3. GABAシナプスの興奮転化へのアストロサイトイトNKCC1関与機序の解明:以上から、ニューロンから放出されたGABAにアストロサイトがGABAA受容体を介してシナプス間隙へCl-を供給することで、シナプス後細胞のCl-濃度勾配の急激な破綻に対して防護的に働くこと考えられた。これらのCl-動態を直接可視化するため、テタヌス刺激中のニューロンとアストロサイトでの同時Cl-イメージングを試みたが、技術的困難さから結論的な結果には至らなかった。しかしながら、アストロサイトのNKCC1がニューロンのCl-ホメオダイナミクスに能動的作用をもたらすことは証明できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シナプス間隙へのCl-の供給(野生型でのアストロサイトの[Cl-]i低下、ニューロンでは増加がKOではアストロサイトの[Cl-]i低下が消失)を直接可視化することはできなかったものの、アストロサイト選択的NKCC1を消去したALDH1L1-Cre::NKCC1-flox/floxマウスを独自に作成し、ニューロンから放出されたGABAにアストロサイトがGABAA受容体を介してシナプス間隙へCl-を供給することで、シナプス後細胞のCl-濃度勾配の急激な破綻に対して防護的に働くことを証明できた。シナプス間隙のCl-を低下させるニューロンのKCC2変化の検討は次年度とした。
|
今後の研究の推進方策 |
1.GABAシナプスの興奮転化へのアストロサイトNKCC1関与の機序の解明:ニューロンから放出されたGABAにアストロサイトがGABAA受容体を介してシナプス間隙へCl-を供給することで、シナプス後細胞のCl-濃度勾配の急激な破綻に対して防護的に働くという我々の仮説を、ALDH1L1-Cre::NKCC1-flox/floxマウスを用いてさらに検討する。ニューロンのNKCC1を阻害してシナプス後細胞のCl-濃度勾配を戻した場合の後発射がどうなるか観察し仮説を証明する。 2.てんかん原性獲得モデルを用いたニューロンNKCC1標的治療の評価: Bumetanideの臨床治験に疑問が残る理由が、ニューロンだけでなくアストロサイトのNKCC1も抑えてしまった結果である可能性を検討するため、KOでbumetanideでニューロンのNKCC1 だけを追加抑制した場合を検討する。また、てんかん原性獲得モデルでのニューロンとアストロサイトでのGABAの変化も確認する。 3.ニューロン興奮性へのアストロサイトNKCC1関与のインビボ2光子イメージング解析:アストロサイトにCa2+センサー(RCamP)を発現するマウスに、シナプシンプロモーターのAAVによりさらにGCaMP6を神経細胞に発現させ、ピロカルピンによるてんかん原生誘導を行って、神経細胞集団とアストロサイトの活動を2光子顕微鏡によるCa2+イメージングで解析する。ALDH1L1-Cre::NKCC1-flox/floxマウスでも同様の観察を行い、アストロサイトのNKCC1が、アストロサイトと神経細胞集団の活動相関に与える影響を明らかにする。ニューロンのKCC2持続脱リン酸化マウスではシナプス間隙Cl-増加が起こると考え、てんかん原生への影響を同様に観察する。
|