研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
23H04161
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
服部 祐季 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10754955)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ミクログリア / 脳発生 / 大脳 / ライブイメージング / 胎児 / マクロファージ / 脳境界 / 脳室 / イメージング / 発生 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、in vivoイメージング技術を胎生12日目という早い胎齢のマウスに適用し、脳室内腔マクロファージとミクログリアの生体内での細胞動態の理解を深める。ミクログリアに多様性があることがすでに報告されているが、それぞれがどういった「機能」を果たすのかはまだ多くの謎が残っている。ミクログリアの由来・分布経路と将来の多様な機能の関連性の解明に向け、神経系や血管系の異種細胞との相互間ダイナミクスを明らかにしながら、時間軸に沿ったミクログリアの性質変化や機能を解明する。
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研究実績の概要 |
ミクログリアは胎生初期に卵黄嚢でその前駆細胞が生じることが分かっているが、それがどのような経路を通って脳に定着を開始するのかはまだ明らかにされていない。私たちは、マウス生体イメージングによる動態解析、フェイトマッピングを用いた細胞追跡調査を通じて、ミクログリアは少なくとも2つの異なるルートをたどって大脳皮質原基に定着することを見出した。すなわち、一つは胎生9~10日目頃にミクログリアの性質を備えて大脳原基内を移動して定着する集団で、もう一つはそれよりも少し遅れて胎生12日目に脳室から大脳皮質原基に流入する脳境界関連マクロファージに由来する集団である。そこで本研究課題では、この脳室に存在する脳境界関連マクロファージの大脳原基への流入がどのようなメカニズムによって制御されているのかを明らかにすることを目標に、本年度(2023年度)は、侵入の場における脳質マクロファージ周辺の細胞との位置関係や相互作用についての詳細な組織構造解析、および、それに関わる分子メカニズムの探索・同定に向けた解析を推進した。大野伸彦先生のご協力を得て、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)による構造解析に着手し、標本作製および観察に最適なサンプリング・観察の条件検討を行い、十分な解析ができるまでに状況が整った。また、各胎齢や各領域における網羅的なライブイメージング解析を通じて、脳室マクロファージの大脳原基への侵入は時空間的に制御されている可能性が見えてきたので、その分子メカニズムの解明に向けて研究を推進した。また、ミクログリアが脳に定着を開始するまでに経由する分布経路の違いによって性質に差があるかの検証を行うための動物準備や条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って研究は順調に進んでおり、この一年で脳室マクロファージの大脳原基侵入メカニズムについての理解をさらに深めることができた。脳室マクロファージの侵入が発生しやすい領域があることや、胎齢の進行に伴い供給源・割合・頻度等が変遷してくこと等が新たに分かり、今後注目すべき点・明らかにすべき点が明確になった。 また、電子顕微鏡(SBF-SEM)を用いた侵入の場における微細組織構造解析に向けて、本年度は電子顕微鏡観察用の標本作製やサンプリングの条件検討をおこなった。さまざまな検討を行った末、適切なサンプリング調製方法が定まったため、次年度以降スムーズに解析を行える見通しが立った。 また、ミクログリアの分布経路の違いに依存した性質多様性の理解に向けて、遺伝子発現解析を実施するための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ミクログリアが脳原基に定着するまでのプロセスの同定とそのメカニズムの理解 脳室マクロファージが大脳原基に流入する際、脳室面に向かって伸長する血管フィロポディアが足場として機能する可能性が見えている。マウス胎児脳スライス培養・二光子顕微鏡を用いたin vivoライブ観察による動態解析に加え、電子顕微鏡による微細構造解析を行う。また関与する分子メカニズムについて明らかにする。 また、脳室マクロファージの流入がどのようにして時空間的に制御されているのかについて、領域等異性、時間軸に沿った変遷について組織・細胞・分子レベルで解析する。 (2)分布経路の違いによる性質多様性の解明 脳に存在するミクログリアをフェイトマッピングによる標識を施して分布経路の違いによって細胞集団を見分け、性質の違いや特異的な機能を知るため網羅的遺伝子発現解析を実施する。また、脳スライスあるいはin vivoライブイメージングによって神経系・血管系細胞との相互作用、動態を詳細に捉え、機能的役割の解明に役立てる。
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