研究領域 | 不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構 |
研究課題/領域番号 |
23H04192
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
梅澤 泰史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70342756)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 乾燥ストレス / 開花 / アブシシン酸 / リン酸化 / 遺伝子発現 / 乾燥逃避 |
研究開始時の研究の概要 |
乾燥ストレスが不規則に変化する状況では、植物はストレス応答と生長制御とのバランスを切り替えながら、レジリエントな生存戦略をとっていると考えられる。申請者らは、このような生存戦略に関わる因子として、SNS1とよばれるタンパク質に着目し、SNS1がABA応答を負に制御することや、花成ホルモンFT遺伝子を介して乾燥逃避性の開花誘導に関与することを示してきた。本申請では、その研究をさらに発展させる形で、①SNS1による遺伝子発現調節機構の解明、および②SNS1の分解制御機構の解明、の2つの課題に取り組み、乾燥ストレスの情報がSNS1の分解制御を介してFT遺伝子発現に入力される新規経路を提唱する。
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研究実績の概要 |
乾燥ストレスが不規則に変化する状況では、植物はストレス応答と生長制御とのバランスを切り替えながら、レジリエントな生存戦略をとっていると考えられる。申請者らは、このような生存戦略に関わる因子として、独自に発見したSNS1とよばれるタンパク質に着目し、SNS1がABA応答を負に制御することや、乾燥逃避性の開花制御に関与することを示してきた。本申請では、その研究をさらに発展させる形で、SNS1による遺伝子発現調節機構の解明、およびSNS1の分解制御機構の解明、の2つの課題に取り組む。SNS1が植物の生長や開花を制御する分子メカニズムを解明することが目的である。現在わかっているSNS1の機能は、植物の乾燥ストレス応答におけるステージゲートの概念に合致するため、領域の発展に貢献できる研究内容である。 本年度は、SNS1変異体について表現型および遺伝子発現の両面からさらに詳細に解析することで、SNS1が植物の乾燥逃避性の開花制御を促進することを証明するに至った。さらに、これらの研究成果をまとめて論文を発表した。SNS1の遺伝子発現制御機構に関しては、トランスクリプトーム解析及びChIP-seq解析を行い、そのデータを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目的は、SNS1による乾燥逃避性の開花制御、SNS1の遺伝子発現制御機構、およびSNS1の分解制御機構を解明することである。このうち、SNS1による乾燥逃避性の開花制御については、本年度にデータをまとめて論文として発表した。SNS1の遺伝子発現制御機構に関しては、当初はSNS1がヒストン修飾を制御しているのではないかという仮説を立てて、研究を行ってきた。しかし、ChIP-seq解析の結果からはその仮説は否定された。一方、予備的な解析の結果から、SNS1はヒストン修飾を制御しているではなく、ヒストン修飾を読み取る機能を持つことが推定された。現在、この仮説を検証すべく実験を計画しているところである。以上のことから、本研究はおおむね順調に推移していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、SNS1変異体のChIP-seq解析およびトランスクリプトーム解析のデータを用いて、SNS1がどのようなヒストン修飾の部位に集積するかを調べていく予定である。その際、大規模データからパターンを読み取るために、マシンラーニングの手法を活用するべく準備を進めている。SNS1の集積が遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにしていく。また、SNS1の相互作用因子の解析を進めることで、遺伝子発現制御機構をさらに詳細に明らかにしていく予定である。一方、SNS1の分解制御機構については、これまでにSNS1が26Sプロテアソームによって分解されることを明らかにしている。したがって、SNS1のポリユビキチン化を証明する必要がある。また、SNS1をユビキチン化するユビキチンリガーゼについても解析を進める予定である。相互作用因子の解析結果から、現在複数のユビキチンリガーゼの候補を得ているため、これらの候補とSNS1の相互作用を調べたり、遺伝子破壊株の解析を行うことで、SNS1のユビキチンリガーゼを同定する。
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