研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
23H04213
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
能瀬 聡直 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | ショウジョウバエ / 臨界期 / 自発活動 / 運動回路 / 電気シナプス |
研究開始時の研究の概要 |
動物は自身が生み出す運動の結果を常にモニターし、その成否に照らして神経回路を再編成することで、適切かつ柔軟な運動制御を可能とする。本研究ではこの背景にある臨界期可塑性を、ショウジョウバエ幼虫をモデルとして探る。これまでに臨界期において、自発活動により自ら未熟な運動を生成し、そのフィードバックを介して自身を再編することで他の細胞を含めた運動回路全体の発達に必須の役割を果たすM/A27神経回路を同定している。本研究ではこの回路の自発活動の生成機構を分子・細胞レベルで探るとともに、運動経験による回路再編成の基盤を追究することにより、臨界期運動回路の自己構築の仕組みを解明する。
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研究実績の概要 |
動物は自身が生み出す運動の結果を常にモニターし、その成否に照らして神経回路を再編成することで、適切かつ柔軟な運動制御を可能とする。発生・発達期に特に顕著なこの可塑性は動物が適応的な行動を実現するのに必須の機構だがその仕組みは不明である。本研究ではショウジョウバエ幼虫をモデルとしてこの問題に迫る。これまでに運動経験が働きかける標的としてM/A27神経回路を同定し、この回路が自発活動により引き起こした未熟な出力のフィードバックを介して自身および他の構成細胞を再編成することを示している。Mニューロンは発生の最初期には散発的な活動を行うが、次第にセグメント間での同期発火を起こすようになり、最終的には尾側から頭側へ伝わる波状の活動を示すようになる。この前半の活動様式が散発的から同期発火へと成熟する仕組みは、隣接するセグメントのMニューロン間に電気シナプスが形成されることで起こることが明らかになっている。しかし、後半の同期発火から波状活動へと成熟する機構は不明であった。そこで、本年度計画において、波状活動の出現にMニューロンへのどのような入力が必要なのかを調査した。RNA干渉法を用いて、Mニューロンにおいて種々の受容体をノックダウンし、孵化直後の幼虫の蠕動運動を評価したところ、ニコチン性アセチルコリン受容体をノックダウンすると幼虫の蠕動運動に異常が生じることが分かり、Mニューロンへのアセチルコリン受容体を介した興奮性の化学シナプスがM/A27h回路の活動様式の成熟に必要である可能性が示唆された。さらに、コネクトミクス解析により、Mニューロンの最も強い上流細胞としてアセチルコリン作動性ニューロンA18fを同定した。これらの結果から、M/A27h回路はA18fを含んだより大きなフィードバックループに取り込まれ、波状の活動を示すようになるのではないかという仮説が立てられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mニューロンへのアセチルコリン受容体を介した興奮性の化学シナプスからの入力がM/A27h回路の活動様式の成熟に必要であることを示し、さらにコネクトミクス解析により、この入力を司るニューロンA18fを同定した。これらの結果から、M/A27h回路はA18fを含んだより大きなフィードバックループに取り込まれ、波状の活動を示すようになるのではないかという仮説を立て、検証することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の仮説を検証するため以下の研究を進める。 (1)完成した幼虫におけるA18fの機能を調べるために、光遺伝学によりこのニューロンの機能を亢進、阻害したときの幼虫の行動への影響を調べる。またカルシウムイメージングにより活動様式を調べる。 (2)胚発達の臨界期におけるA18fの機能を調べるために、この時期に特異的にA18fの機能を亢進、阻害したときの運動回路全体の発達に対する影響を調べる。
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