研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
23H04216
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
壷井 將史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20847123)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 軸索終末分岐 / 小胞体-ミトコンドリア接触 / 臨界期 / 小胞体-ミトコンドリア接触 |
研究開始時の研究の概要 |
感覚神経回路を担うニューロンは臨界期において末梢の感覚器からの刺激に応じてその軸索分岐をダイナミックに変化させ、臨界期終了後はその可塑性が急速に失われる。興味深いことに、一部の神経回路では臨界期の終了後もその可塑性が維持されており、可塑性維持の有無は同一軸索の区画ごとに異なる。本研究計画では、ニューロンの局所機能を支えるオルガネラおよびオルガネラ間相互作用に着目し、臨界期終了後に軸索の区画特異的に可塑性が維持される分子メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
臨界期におけるダイナミックな軸索リモデリングには外部からの刺激に加えて自発的な神経活動も重要であるが、軸索分岐リモデリングにおける自発的な神経活動の必要性は投射領域 (軸索区画) ごとに異なる。このことは、軸索の可塑性を区画特異的に制御する細胞内因的なメカニズムが存在することを示唆するが、その分子実態は不明である。我々のグループでは、小胞体を中心とするオルガネラ間接触が軸索区画特異的な軸索分岐形成制御に寄与する可能性を見出した。そこで本研究では、小胞体が形成するオルガネラ接触場のうちどの接触場が区画特異的な軸索分岐リモデリングを制御するか、さらに、軸索区画ごとのオルガネラ間接触の状態を蛍光電子相関顕微鏡を用いて明らかにする。本年度は軸索分岐リモデリングを制御するオルガネラ間接触場の検討及び、オルガネラ間接触場が軸索分岐リモデリングを制御する分子メカニズムとして、小胞体-ミトコンドリア接触が軸索分岐におけるミトコンドリア動態に与える影響の検討を行った。小胞体-ミトコンドリア接触形成を担うミトコンドリア局在タンパク質の機能欠損を行ったところ、大脳皮質交連ニューロンの軸索分岐が顕著に低下することを見出した。このことは、小胞体が形成するオルガネラ接触場のうち、小胞体-ミトコンドリア接触が軸索分岐リモデリングを制御する可能性を示唆している。さらに、大脳皮質ニューロンの初代培養系において、同じ小胞体-ミトコンドリア接触を担うタンパク質の機能欠損を行ったところ未成熟ニューロンにおいて軸索におけるミトコンドリアの順行・逆行輸送の頻度が顕著に低下することを見出した。以上の結果から、小胞体-ミトコンドリア接触がミトコンドリア動態を介して軸索分岐リモデリングを制御する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、小胞体が形成するオルガネラ接触場のうちどの接触場が区画特異的な軸索分岐リモデリングを制御するか、さらに、軸索区画ごとのオルガネラ間接触の状態を蛍光電子相関顕微鏡を用いて明らかにすることを目指して研究を行った。本年度は、そのうち前者の項目について重点的に検討を行った。その結果、小胞体-ミトコンドリア接触がミトコンドリア動態を介して軸索分岐リモデリングを制御する可能性を示唆する結果を得ており、軸索の可塑性を区画特異的に制御する細胞内因的なメカニズムの一端を明らかにすることに成功した。この結果に基づき、今後は小胞体-ミトコンドリア接触に着目し、軸索分岐ごとにその接触状態に違いがあるかを検討できるため、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、小胞体-ミトコンドリア接触がミトコンドリア動態を介して軸索分岐リモデリングを制御する可能性が示唆された。今後は、この制御が臨界期終了後に働くメカニズムであるかを検討する。さらに、軸索区画ごとの小胞体-ミトコンドリア接触場の状態を蛍光電子相関顕微鏡を用いて明らかにすべく、相関顕微鏡に必要なプローブについて検討を行う。
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