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臨界期後の遺伝学的操作による神経発達障害モデルの社会行動異常の改善

公募研究

研究領域脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作
研究課題/領域番号 23H04227
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅲ)
研究機関信州大学

研究代表者

田渕 克彦  信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20546767)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
キーワード自閉症 / ニューロリギン / IQSEC2 / 遺伝子治療 / 発達障害 / シナプス / neuroligin / 胎児期ニコチン暴露マウス / 深層学習
研究開始時の研究の概要

自閉症などの神経発達障害は、遺伝学的異常を原因とする先天的脳機能障害であるため、臨界期を過ぎて病態が固定された後は、根本的治療は不可能であると考えられてきた。本研究は、自閉症モデルマウス(Nlgn3 R451CとIqsec2 KOマウス)を用いて臨界期後の遺伝子操作により、これらマウスの社会行動の異常の改善を目指すものである。特に、セロトニン作動性ニューロンに焦点を当てたmPFCでの臨界期後レスキューのメカニズムの解明と腹側海馬歯状回での成熟後ニューロン新生と社会行動異常との関係に主眼を置き、これらを遺伝学的に操作することにより、革新的な自閉症治療法の可能性を見出すことを目的とする。

研究実績の概要

自閉症モデルマウスであるneuroligin-3 R704C knock-inマウスにセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)であるfluoxetineを投与し、three-chamber試験において、社会新奇嗜好性の低下が改善されることを確認した。また、neuroligin-3 R451C knock-inマウスと野生型コントロールマウスにBrdUを投与する実験を行い、組織学的解析により、neuroligin-3 R451C knock-inマウスの腹側海馬歯状回での成熟後神経新生が低下していることを確認した。これらの研究と並行して、野生型妊娠マウスにニコチンを含む飲料水を摂取させ、胎児期ニコチン暴露マウスを作成した。これらのマウスは、ADHDモデルになることが知られていたが、行動実験により、ADHD関連行動を確認するとともに、juvenile interaction試験を行い、これらのマウスでは社会性が低下していることを見出した。これらの解析において、深層学習を用いたマウスの社会行動の自動検出システムの開発も行い、成功した。さらに、胎児期ニコチン暴露マウスについて、BrdU投与実験を行い、これらのマウスの腹側海馬歯状回で、成熟後神経新生が低下していることも見出した。胎児期ニコチン暴露マウスが、ADHDに加え、自閉症様症状を呈することを見出した成果と、これらの研究過程で深層学習を用いた行動異常の自動検出システムを開発したことに関する論文を発表した(Deep-Learning-Based Analysis Reveals a Social Behavior Deficit in Mice Exposed Prenatally to Nicotine.
Zhou M, Qiu W, Ohashi N, Sun L, Wronski ML, Kouyama-Suzuki E, Shirai Y, Yanagawa T, Mori T, Tabuchi K. Cells. 2024 Feb 1;13(3):275. )。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究で、当初予定していたモデルマウスに加え、新たに胎児期ニコチン暴露マウスが自閉症のモデルマウスになることを見出すことができたため。本研究では、海馬における成熟後神経新生の低下が自閉症のバイオマーカーになるのではないかとの仮説を立ててこれを検証することが重要な目的の一つであったが、neuroligin-3自閉症モデルマウスに加え、胎児期ニコチン暴露マウスでも、自閉症関連社会行動異常が見られるとともに、成熟後海馬神経新生の低下が認められたことから、この仮説を裏付ける重要な所見となった。また、本研究課題は、自閉症マウスモデルを用いた研究がコアになるが、これらの行動解析を行うための、深層学習を用いた社会行動異常の自動検出システムを開発することができた。これは、当該分野において大きな財産になるとともに、本研究を推進していく上でも極めて有益な技術となり、これらを鑑みて、当初の計画以上に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

2024年度の研究では、2023年度に未実施の計画を中心に進める。具体的には、以下の3つの計画を重点的に推進する。
mPFCに投射するセロトニン作動性ニューロンの役割の検証について、Neuroligin-3 R451Cマウスにfluoxetineを投与し、mPFCのシナプス機能をpatch-clamp法で評価する。また、センサータンパク質GRAB_5-HT1.0をmPFCに導入し、社会行動時のセロトニン放出をモニターする。縫線核にチャネルロドプシンを導入し、mPFCで光刺激を行い、社会行動異常の改善効果も検討する。自閉症モデルマウスの腹側海馬ニューロン新生と社会行動異常の関連の検証に関する研究については、BrdUを投与し、野生型コントロールマウス、Nlgn3 R451Cマウス、Iqsec2 KOマウスの脳切片を免疫染色で解析する。fluoxetine投与によるニューロン新生の改善効果を検討し、社会行動時のセロトニン作動性ニューロンの活動変化をモニターする。腹側海馬歯状回での遺伝学的操作によるニューロン新生と社会行動異常の改善効果の検討に関する研究については、生後4週目のNlgn3 R451Cマウスの腹側海馬歯状回にCre組換え酵素発現AAVを導入し、BrdUを投与してニューロン新生の改善効果を評価する。3-chamber試験で領域特異的遺伝子改変が社会行動に与える影響を解析し、AAVによる正常なNlgn3遺伝子のノックインがニューロン新生と社会行動を改善するかを検証する。Iqsec2 KOモデルでも同様の実験を行い、ニューロン新生および社会行動の改善効果を確認する。
以上の計画により、2024年度の研究は、2023年度に得られた知見を基に、神経発達障害のメカニズム解明と治療法開発に向けて大きな進展を遂げることが期待される。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)

  • [雑誌論文] Large-scale animal model study uncovers altered brain pH and lactate levels as a transdiagnostic endophenotype of neuropsychiatric disorders involving cognitive impairment2024

    • 著者名/発表者名
      Hideo Hagihara、Takao Keizo、他129名
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12 ページ: 89376-89376

    • DOI

      10.7554/elife.89376

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Deep-Learning-Based Analysis Reveals a Social Behavior Deficit in Mice Exposed Prenatally to Nicotine2024

    • 著者名/発表者名
      Zhou Mengyun、Qiu Wen、Ohashi Nobuhiko、Sun Lihao、Wronski Marie-Louis、Kouyama-Suzuki Emi、Shirai Yoshinori、Yanagawa Toru、Mori Takuma、Tabuchi Katsuhiko
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 13 号: 3 ページ: 275-275

    • DOI

      10.3390/cells13030275

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Diverse Clinical Phenotypes of CASK-Related Disorders and Multiple Functional Domains of CASK Protein2023

    • 著者名/発表者名
      Mori Takuma、Zhou Mengyun、Tabuchi Katsuhiko
    • 雑誌名

      Genes

      巻: 14 号: 8 ページ: 1656-1656

    • DOI

      10.3390/genes14081656

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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