研究領域 | DNAの物性から理解するゲノムモダリティ |
研究課題/領域番号 |
23H04289
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 亜矢子 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90453050)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | ヌクレオソーム / 溶液NMR / ヒストンテイル / 動的な相互作用 / リンカーヒストンH1 / 天然変性領域 / NMR |
研究開始時の研究の概要 |
ヘテロクロマチンとユークロマチンの構造変換は、DNAやヒストンの修飾などのエピジェネティック修飾によって制御されている。ヒストンの修飾部位の多くは、ヌクレオソームのコア構造から突き出た特定の構造を持たない天然変性領域に集中する。また、ヌクレオソームに結合するリンカーヒストンH1のN末とC末の長いテイルも天然変性領域である。本研究では、これら天然変性領域に着目し、ヌクレオソームにリンカーヒストンH1の結合した状態での翻訳後修飾やDNAメチル化によるヒストンH3とDNA間の動的な相互作用変化を解析し、クロマチンの構造変換機構におけるDNAを介したヒストンテイルの動的な相互作用の重要性を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ヘテロクロマチン中のヌクレオソームであるリンカーヒストンH1が結合し た状態で、翻訳後修飾によるヒストンH3とDNA間の動的な相互作用変化を解析し、クロマチンの構造変換機構におけるDNAを介したヒストンテイルの動的な相互作用の重要性を解明することを目的としている。 リンカーヒストンH1の結合によって、ヌクレオソーム中のヒストンH3のN末テイルの動的構造が変化することを明らかにしていたので、リンカーヒストンH1の天然変性領域側の変化を明らかにするために研究を進めた。リンカーヒストンH1もN末テイルに約30残基とC末テイルに約110残基の塩基性残基を多く含む天然変性領域が存在するため、まずはH1のみのNMRの解析を行う必要があった。そのため、全長および3種類の天然変性領域欠失変異体の試料調製を行い、NMRスペクトルを取得した。続いて、リンカーDNAを模倣した30塩基対の2本鎖DNA のみをH1に添加し、いくつかのシグナルで化学シフト変化を確認した。さらに、ヌクレオソーム中では、ヒストンH3のN末テイルとDNAを取り合っていると考えられるため、H3N末テイルペプチドの存在下でDNAをH1に添加すると、DNAのみのときとは、異なるシグナル変化が観測された。 さらに、H1のリン酸化の試料調製方法も検討し、ゲルシフト法によってあるリン酸化によってH1と2本鎖DNAとの結合能が減少することも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リンカーヒストンH1の帰属の困難さなどから、ヌクレオソームの調製に手が回らず時間を要しているため、計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒストンH1が結合したヌクレオソーム(クロマトソーム)中のヒストンH3の N末テイルやリンカーヒストンH1の天然変性領域とDNAとの動的な相互作用を溶液NMR法 により原子レベルで解析する。そのため、今年度は、ヒストンH3のみを安定同位体標識した193bpのヌクレオソームを調製し、昨年度調製 した様々な⻑さのリンカーヒストンH1を添加することによって、シグナルの変化を観測する。昨年度のNMRの解析結果を使用しながら、ヌクレオソームにおけるH1の天然変性領域の動的構造を明らかにする。さらに、ヘテロクロマチンの解除にもつながるH1のリン酸化によってもどのように変化するかを明らかにする。
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