研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
23H04304
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋村 秀典 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (50897410)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 形態形成 / 細胞外基質 / 細胞運動 / 細胞接着 / 細胞形態 |
研究開始時の研究の概要 |
多細胞生物は、柔らかい細胞を積み上げることに加え、剛性を持った非細胞性の素材を加工し配置することで組織を作り上げる。本研究では、その一例としてアメーバの一種である細胞性粘菌が多細胞性の子実体を形成する際に行う、セルロースを「塗り固める」工程の実態に迫る。セルロース合成酵素や接着分子などの関連分子の局在の観察や、それらの欠損株を用いた解析を行うことで、組織内でのセルロースの沈着機構を調べる。また、子実体の柄の剛性を測定することで、組織支持に重要な物性を調べる。
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研究実績の概要 |
本年度は細胞内分子局在の解析および変異体の作成を主に行なった。子実体の組織内の細胞の分子局在を調べるにあたり、既存の蛍光プローブはシグナルが弱く、組織深部に位置し支持構造である柄を取り囲む細胞では蛍光が散乱するため観察が難しかった。そこで近年開発された高輝度の蛍光タンパク質を細胞性粘菌のイメージングに取り入れることでシグナルを改善し、さまざまなタンパク質に蛍光タグを付与したものを発現させた株を用いてライブイメージングを行うことで、子実体の細胞において新たに30種以上の分子の局在パターンを同定した。特に細胞外基質との接着に関わるビンキュリンなどの分子群は柄との接着部において特徴的な局在を示すことがわかった。 組織内の柄の周囲に位置する細胞や柄から外れた細胞の間で形状にどのような変化が生じるかを定量的に調べるため、組織内の細胞の形質膜を標識した株の作成を行なった。これまでのプラスミドを用いた蛍光プローブの発現では細胞間でシグナルのばらつきが生じ、一部の細胞が標識されず集団レベルでの解析が困難であった。そこで相同組み換えによりセーフハーバーに配列を挿入する手法を取り入れることで、組織内のほぼ全ての細胞を均一に標識することに成功した。これにより、柄に接する前後での細胞の形状変化をより追いやすくなり、3次元的な形状変化の画像解析を行えるようになった。 支持構造の形成や柄との接着に関連する分子を欠損した株をCRISPR/Cas9により作成し、表現型を観察した。その中で柄の機械強度に異常が見られるものを新たに同定し、野生型と変異株の間で上記の標識法を用いて細胞形状を比較したところ、柄内部の細胞の配置や、組織形成時の形状維持に異常が見られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光タンパク質の選定を通じたシグナルの改善や、CRISPR/Cas9 や相同組み換えに利用することで安定してゲノム上に蛍光タグをノックインすることができるようになるなどの観察技術の向上により、集団レベルでの細胞形状解析などが可能な均一標識や、これまで報告のなかった分子の新たな局在パターンを同定できるようになった。また、本課題の主な対象である柄の構造に異常をきたす変異体などさまざまな遺伝子欠損株の作成も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に作成した変異株や蛍光標識株を用いて、共焦点顕微鏡やライトシート顕微鏡の観察を通じて細胞の形状や分子局在パターンの解析を行う。また、支持構造である柄との接着面に特徴的な局在パターンを示したタンパク質のノックアウト株の作成も引き続き行う。 また、研究に主に用いているD. discoideumの近縁種であり、枝分かれの支持構造を作るPolysphondylium属や、他の細胞性粘菌と異なり細胞性の柄を作らないとされるAcytostelium属の種を安定して培養・観察できるようにしたため、それらを用いた支持構造の形成過程の観察を行う。
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