研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
23H04310
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山城 佐和子 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (00624347)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | メカノバイオロジー / 蛍光1分子イメージング / 定量生物学 / 流動 / 細胞接着 / 蛍光1分子顕微鏡 / shear stress / アクチン細胞骨格 |
研究開始時の研究の概要 |
生体において、方向性を持った流動は、細胞の外(血流など)と内(細胞骨格に起因する細胞内流動)に存在し、重要な役割を担う。流動は、極性を持った「力」を伴う点で興味深いが、細胞内外の流動力の伝達機構、及び、流動の生理的意義は未だ不明の点が多く残っている。蛍光単分子スペックル顕微鏡は、細胞内外の“流れ”に伴う分子動態を高精度に捉える強力な手法である。本研究は、代表者の先行研究で明らかにした流動力伝達機構の知見を踏まえ、1)細胞内流動力がECM線維配向リモデリングを駆動する可能性の検証、及び、2)ずり応力に起因する細胞膜タンパク質勾配形成の普遍性と生理的意義の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
血管内皮において、血流に起因するずり応力 (shear stress) の方向性は重要な血流刺激と考えられているが、内皮細胞がどのようにずり応力方向を感知するかについては、ほとんど不明であり、重要な未解決課題の一つである。これまで、ずり応力メカノセンサーについては、細胞膜でのイオンチャネルや受容体の活性化に焦点が当てられてきた。一方、細胞膜は流動性に富んでおり、細胞外流が細胞膜でタンパク質を運搬し、細胞内に流れ情報を伝達する可能性がある。本研究では、この仮説を検証した結果、生理的強度 (10-20 dyn/cm2) のずり応力負荷により、細胞膜タンパク質が下流方向に集積する濃度勾配形成現象を見出した。さらに、ずり応力負荷によって勾配形成が誘導される細胞膜タンパク質についてずり応力下での蛍光1分子イメージング法を確立した。1分子挙動解析の結果、ずり応力負荷下では細胞膜タンパク質の酢酸挙動に流れ方向のバイアスが加わることを明らかにした。これらの実験結果より、細胞外流に起因するずり応力により、細胞膜タンパク質が直接流れ方向に運搬されることが示唆された。これらの研究成果について国際学術誌に論文投稿準備を行なっている。 また、細胞を取り囲む微小環境と細胞の力学的相互作用を明らかにすることを目的として、細胞内蛍光単分子スペックル顕微鏡により、細胞外基質とアクチン線維を連結する接着構造タンパク質タリンの高精度1分子可視化解析を行なった。その結果、アクチン線維流動の牽引力が引き起こすタリン分子の構造変化を捉えることに成功した。さらに、タリン分子のメカニカル・アンフォールディングが細胞内流動力を細胞外基質に伝達する新しい力伝達機構を解明し、国際誌に学術論文として発表した (Yamashiro et al., Nature Communications, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究成果を国際学会誌に論文発表した (Yamashiro et al., Nature Communications, 2023)。さらに、本研究で見出した細胞外流(ずり応力)に起因する細胞膜タンパク質の勾配形成について、国際共同研究をアメリカリーハイ大学物理学の Aurelia Honerkamp-Smith博士の研究グループと行い、国際学会誌への投稿論文を準備中である。これらの研究成果について、国内外の学会で複数の招待講演を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で見出した細胞外流(ずり応力)に起因する細胞膜タンパク質の勾配形成について、国際共同研究をアメリカリーハイ大学物理学の Aurelia Honerkamp-Smith博士の研究グループと行っており、国際学会誌への論文投稿・発表を予定している。また、細胞外基質と細胞の接着構造において、接着構造タンパク質ビンキュリンの細胞内機能が、これまでの細胞接着モデルと異なる可能性を示唆する実験データが得られてきている。本年度は、ビンキュリンの分子挙動と細胞内機能を明らかにし、研究成果を国際学会誌に論文投稿・発表する。 さらに本年度は、第47回日本分子生物学会年会において、研究代表者がオーガナイザーとしてシンポジウム「流動研究の最前線 物理学と生物学の融合」を行う予定である。Aurelia Honerkamp-Smith博士を含む先鋭の研究者たちとの議論や情報交換を活用し、研究を進める予定である。
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