研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
23H04314
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐藤 伸 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (90512004)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | コラーゲン / 真皮 / アホロートル |
研究開始時の研究の概要 |
コラーゲン繊維のもつ直線的な構造物を生体内に作り出す細胞メカニズムの解明を目指す。アホロートルの四肢真皮コラーゲン層はコラーゲンが“麻布”のようなきれいな編み目を幾重にも重ねたような、極めて整然とした構造を持つ。「柔らかなイメージ」のある細胞がどのように直線的な構造を構築するのかについては、これまでのところほとんど知見がない。本研究では、アホロートルの真皮内で特定の形状を持つコラーゲンを編み出すのに必須な細胞メカニズムと、特定の形態から放出されるコラーゲンの自律的な繊維形成メカニズムを解き明かす。
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研究実績の概要 |
本研究は、in vivoにおける特定形状のコラーゲンを編み出すのに必須な細胞メカニズムと、特定の形態から放出されるコラーゲンの自律的な繊維形成メカニズムを解き明かすことを目的にしている。アホロートルの皮膚を使用することで、アホロートルの持つ高い皮膚透明度を利用でき、これはin vivoのコラーゲンイメージングに大きなアドバンテージとなる。このアドバンテージを活かし、真皮コラーゲン構築過程を可視化することで、collagenという建築工材が体内でどのように使われ構造として完成していくのかを明らかにすることができる。 本年は、共同研究者の黒田(研究班員)の協力のもと、コラーゲンの生体内イメージングに注力した。アホロートルの真皮コラーゲン構造は3層の構造からなり、天井層・スポンジ層・緻密層と名付けた。この各層構造がどのような細胞によってどのように形成されていくのかを蛍光プローブを用いて可視化することに成功した。皮膚コラーゲンは「常識」として、真皮線維芽細胞が主たる建築要員として考えられており、多くの動物で保存されたシステムであるとされる。しかし、その実、真皮線維芽細胞が実際に真皮のコラーゲンをどのように構築していっているのは全くの不明であった。我々の研究成果によって、真皮コラーゲンは真皮線維芽細胞の中でも特殊な形態をした細胞が編み込み、そしてさらに主たる建築要員は常識外の「表皮細胞」であることを明らかにした。そして、この常識外の知見はマウスやニワトリなどにも保存されるシステム(=見逃されてきた発見)であることも明らかにした。 これらの研究成果は、教科書的な常識を塗り替える画期的な発見を含むため、大きな反響が期待できる。現在論文化の作業に入っており順調に研究は伸展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り大きな発見までたどり着いており、論文化のめども立っている。研究計画の中で示したシミュレーションの部分だけは残念ながら、パートナーとしての研究者を見つけられていない。このシミュレーションは思ったよりも膨大なPCリソースが必要であるようで、スパコンなどの利用環境を持つ共同研究者を探す必要性に迫られている。この部分だけやや進捗の目詰まりがあるが、ほかに部分に関しては極めて順調であり、本研究のさらなる発展的な研究の芽も発見できている。特に寄与細胞の同定は予想外の方向(表皮細胞が主たる建築要員であること)であり、この点をうまく利用することで、ヒトなどの応用的な出口研究へ可能性が拓ける。現在資生堂などの企業さんなどと連携しながら研究を勧める計画をしている。これらは当初の計画をはるかに超える広がりと展開であり、これらの点から(1)当初の計画以上に進展している という評価を抱いている。
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今後の研究の推進方策 |
極めて順調であるため、主な研究方針については 変更をしない。 現在 論文を取りまとめ中であり 今夏までには提出できる予定である。 論文の提出先としてはElife 誌を 皮切りに 順次影響力の大きい雑誌へと投稿を進める。 すでに 図と表、 そして 主たる文章に関しては 作成 を終えている。共同研究者の黒田とともに 最後の実験の詰めを行っている段階である。 今後は 現在の成果をもとにより大きな研究の発展を目指したい。
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