研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
23H04316
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
斉藤 稔 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (20726236)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 自己組織化 / ソフトマター / トポロジカル欠陥 / 形態形成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、繊維素材の組み合わせから3Dの身体を建築する建築工法に取り組む数理研究である。繊維素材を編みこんで、あるいは、表面全体に張り巡らして三次元構造を作る場合、必ず「トポロジカル欠陥」と呼ばれる極が存在してしまう。近年様々な生体現象で、このような極が三次元的変形の起点になる例が報告され注目されている。 三次元物体の表面を這う繊維の向きを表現するために、微分幾何学と液晶方程式を組み合わせた数理モデルを提案し、どのような条件でトポロジカル欠陥周辺で曲面の座屈が誘起されるか、あるいは新たな欠陥が生成消滅するか、などの条件を求める。
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研究実績の概要 |
本研究は、生体組織の構築方法を数理的に理解するために、「トポロジカル欠陥」に注目した研究である。皺や繊維が組織表面に存在する場合、組織には何らかの意味で「向き」を規定しうるが、局所的に「向き」を定義できないような空間上の特異点も出てきてしまう。トポロジカル欠陥とはこのような特異点を指す。皺や繊維に限らず、細胞が六角格子的に密にパッキングしている状況などでも、「格子の向き」が定義できないようなトポロジカル欠陥も現れうる。
2023年度は細胞の離散モデル(agent-based model)を用いて、いくつかの解析を行なった。曲面上の細胞集団の運動を捉えるために、Monge表記された曲面の上の細胞運動のモデルを解析した。このモデルでは細胞は球状粒子として表現され、細胞の直線的な運動は測地線方程式として記述される。細胞が密な状況になると排除体積効果により細胞が六角格子的に整列するが、曲面の効果により格子の向きが崩れ、トポロジカル欠陥が出現する。また、曲率が高い曲面上の点で細胞の集団回転運動が誘起されうることも発見している。現在はこの現象を解析中である。また平面における変形可能細胞集団におけるトポロジカル欠陥ダイナミクスの研究も行なった。変形可能な細胞モデルを用いて高密度の細胞集団の挙動を調べたところ、細胞の変形しやすさに依存して細胞集団に流体-流体転移が生じる。その転移がトポロジカル欠陥のパーコレーションで説明可能であることも解明している。現在はさらに詳しくこの現象を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
曲面上のトポロジカル欠陥ダイナミクスに関しての理解は一定の進展が見られたが、欠陥が引き起こす曲面の座屈・変形への理論的展開、解析が予定よりも遅れている。これは座屈や変形の挙動を記述する連続体モデルの解析に関して技術的な困難に直面しており、これが全体的な進捗の遅れに影響を与えている。
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今後の研究の推進方策 |
離散モデル(agent-based model)の解析を進め、トポロジカル欠陥のダイナミクスとその曲面変形への効果の理解を深める。具体的には曲面上の細胞運動モデルの解析をすすめ、曲面効果による集団的回転運動が引き起こされる条件を精査し、生体組織内で発生しうるかなどを明らかにする。またこのモデルにおいて、座屈などによる曲面の変形も考慮した発展モデルを検討する。並行して、開発してきたいくつかの数理モデルを用いた実験研究者との共同研究を模索する。同時に連続体モデル解析に関して専門的知識を持つ研究者との協力を模索し、連続体モデルによるアプローチを再検討する。
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