研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
23H04318
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 有紀 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90508186)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 羊膜 / ライブイメージング / トランススケール観察 / トランスジェニックウズラ / 細胞移動 / 上皮 |
研究開始時の研究の概要 |
羊膜は陸上において胚発生する脊椎動物群を特徴付ける重要な組織である。羊膜を構成する細胞群は胚を完全に覆うまで長時間にわたり移動し続けるが、長距離移動の足場となる支持組織が全く存在しない。本研究では、このような特殊な細胞移動環境において広大な膜構造が確立されるメカニズムを解明する。水中から地上生活への移行がどのようにして成し遂げられたのかは、脊椎動物の進化メカニズムを理解する上で重要な課題であるが、四肢や呼吸器の獲得機構が注目されがちである。本研究を通して羊膜そのものの形成機構を解明することで、羊膜類が独自に発達させてきた胚発生機構の理解に繋がることが期待される。
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研究実績の概要 |
羊膜は、陸上において胚発生する脊椎動物群を特徴づける重要な上皮組織である。鳥類では胚体外外胚葉が折り畳まれることによってできる2層の上皮シートが拡張し、最終的に閉塞して羊膜が確立される。羊膜を構成する細胞群は、胚を完全に覆うまで長時間にわたり移動し続けるが、これらの細胞群の基底膜側には長距離移動の足場となるような支持組織が全く存在しない。このような“軟弱地盤”上において広大な膜構造が確立されるメカニズムを解明するため、ヒアルロン酸を介した保水による膨圧を基底面を支える足場として想定し、以下の実験解析からこの仮説を検証した。
形成中の羊膜2層間へヒアルロン酸分解酵素の顕微注入を行なった結果、羊膜形成が阻害されたことから、「ヒアルロン酸足場仮説」が有力であることが示唆された。さらに、3つのヒアルロン酸合成酵素遺伝子群Hasのうち、羊膜において発現するHas2についてノックダウン実験を実施したところ、羊膜の拡大伸長が阻害された。以上の結果から、羊膜形成時に起こる細胞移動にヒアルロン酸が必要である可能性が強く示唆された。
当初計画していた細胞核を可視化するトランスジェニックウズラ胚 Tg (PGK:H2B-mCherry)のトランススケール顕微鏡観察は、mCherryレポー ターの蛍光強度が十分でないことから困難であったため、共同研究先からトランスジェニックウズラ系統 Tg (ubi :memb-eGFP)を新たに導入した。この系統は、強力なプロモーター活性制御下で膜局在型のeGFPレポーターを発現するため、トランススケール顕微鏡観察にも適用可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする分子の機能阻害実験の表現型をもとに、仮説の裏付けができた。また、トランススケール観察に向け、環境整備を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒアルロン酸合成酵素のmRNA発現パターンから、ヒアルロン酸を産生する細胞群の同定は済んでいるが、実際にヒアルロン酸が羊膜のどこに蓄積しているのかについて未解明であるため、Sanketiらの方法(STAR Protocols 4, 102200, 2023)を用いて、ヒアルロン酸の可視化を試みる。また、よ り局所的なヒアルロン酸分解酵素の発現制御を行うため、ヒアルロン酸分解酵素Hyal2の過剰発現実験を上記のトランスジェニックウズラ胚 Tg (ubi:memb-eGFP)に対して実施し、トランススケール顕微鏡を用いてタイムラプス観察を行い、細胞挙動・形態への影響を詳細にする。ヒアルロン合成酵素Has2をノックダウンした場合についても同様の解析を行う。以上の解析から、羊膜形成過程を支える“軟弱地盤”の実体を明らかにする。
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