研究領域 | 実世界の奥深い質感情報の分析と生成 |
研究課題/領域番号 |
23H04336
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白松 知世 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (30750020)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
|
キーワード | 質感 / 音楽 / 身体運動 / 聴覚野 / リズム / ラット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,聴覚と運動におけるリズム知覚が生得的な能力なのか,それとも,経験を通して後天的に獲得されるのかという,質感研究の主要な問いに答えることを目指す.具体的には,音楽への曝露や,運動の繰り返しが,聴覚野のリズム情報処理と,誘発運動パターンをどのように変化させるかを調べる.音楽聴取や身体運動といった,実際の質感経験が,脳と身体を介して,音楽の感性的価値を成熟させていく過程の解明は,実世界における質感情報処理の理解に大きく貢献すると考える.
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,音の質感として音楽のリズムに注目し,リズムに対する知覚 (脳) と運動誘発 (身体) の成熟過程を明らかにすることである.具体的には,ラットを動物モデルとして,音楽への曝露や,音楽に付随した身体運動経験が,聴覚野のリズム情報処理と,誘発運動をどのように変化させるかを調べる.これにより,聴覚と運動におけるリズム知覚が生得的な能力なのか,それとも,経験を通して後天的に獲得されるのかという,質感研究の主要な問いに答えることを目指す. 本年度は,音楽に曝露した成体ラットで,脳の網羅的なリズム情報処理能力の変化を調べた.音楽様刺激を毎日6時間ずつ4週間,飼育ケージ内の成体ラットに曝露した.音楽様刺激は3種類用意し,リズムが明確な音楽 (モーツァルトのピアノソナタK.448) の原曲,同曲のリズムをシャッフルした刺激,音の周波数をシャッフルした刺激とした.ラットを,音楽曝露の無い群,原曲曝露群,リズムシャッフル群,音周波数シャッフル群の4群に分けた. 曝露後,ラットの聴覚野からウレタン麻酔下で,神経活動を多点計測した.リザバーコンピューティングにおける情報処理容量 (information processing capacity, IPC) を得るために,ランダムなクリック列を提示した.なお,クリック列の提示間隔はパラメータとして,10-300 msの範囲の6つから選択した.その結果,音楽曝露の無い群に比べて,音楽様刺激のいずれかに曝露した群では,300 ms間隔の条件において,1次から6次のIPCの総和が有意に大きかった.一方で,曝露した刺激は,IPCには影響しなかった.この結果は,長期の音楽曝露は,脳の情報処理容量に影響し,特に曝露音の刺激間隔の分布が重要であることを示唆する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の第一段階として,成体において,音楽への長期曝露が脳のリズム情報処理に影響する可能性を示した.また,給水設備を高所に設置することで,成体ラットに,後肢のみで身体を支える姿勢 (立位) を頻繁にとらせることに成功した.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した姿勢制御手法を用いて,立位を多くとる環境下で,成体ラットに音楽曝露を施したのち,同様の情報処理容量の変化を調べる.また,音楽様刺激に対する同期運動の強さを定量化する. 幼若ラットに対しても同様の曝露実験を行い,聴覚と運動におけるリズム知覚が生得的な能力なのか,それとも,経験を通して後天的に獲得されるのかという,質感研究の主要な問いに答えることを目指す.
|