研究領域 | 社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化 |
研究課題/領域番号 |
23H04390
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松崎 雄一郎 中央大学, 理工学部, 准教授 (10618911)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 量子コンピュータ / 量子アニーリング |
研究開始時の研究の概要 |
従来の研究では、量子アニーリングとゲート型の量子コンピュータは、異なるアーキテクチャとして議論が行われてきた。我々はこれらの二つを復号化させた新しいアーキテクチャの提案を行う。量子アニーリングは実験的な実現が容易だが、アプリケーションが少ない、ゲート型の量子コンピュータはアプリケーションは多いが、実験的な実現が難しい。これらを組み合わせることで、実験的な実現が比較的容易で、多くのアプリケーションが可能なアーキテクチャを構成する。
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研究実績の概要 |
量子アニーリングにおける励起状態探索の実証を行った。Dwaveのクラウドの量子アニーリングでは、リバースアニーリングと呼ばれる手法を使うことで、励起状態を用意することができる。そこで我々は、自明な励起状態を用意して、そこからハミルトニアンを制御していくことで、非自明な励起状態へと変えていった。その際にエネルギー緩和の影響で基底状態に落ちる効果と、非断熱的遷移により他の状態へ移る効果の競合を観測した。すなわち、単位時間あたりのハミルトニアンの変化が大きいと、エネルギー緩和は抑制できるが、非断熱的遷移が大きくなる。一方で、単位時間あたりのハミルトニアンの変化が小さいと、エネルギー緩和が支配的になるが、非断熱的遷移は抑制できる。また、我々は、量子アニーリングを用いて、ユニバーサルなゲート操作を実行する方法を提案し、Dwaveのクラウドの量子アニーリングで実証を行った。特に縮退の自由度を用いることで、従来はDwaveのデバイスでは難しいと考えられていた、X軸回転とcnotゲートを実行する方法を提案した。また、非対角項が観測できないので、古典的な実証にとどまるが、X軸回転とcnotゲートのDwaveによる実証(0から1への遷移)も行った。さらに、超伝導量子ビットの実験家と共同研究を行うことで、分光測定の理論提案と実験実証を行った。具体的には、カーパラメトリック振動子と呼ばれるデバイスにおいて、パラメトリックドライブの強度を分光測定から求める方法を提案・実証した。パラメトリックドライブを行うことで、mollow tripletが観測されるが、高次の影響に由来するACシュタルク効果により、mollow tripletの形状がゆがむことを理論的に予言した。そしてその理論を実験で実証をして、たしかにパラメトリックドライブの強度が分校測定から推定できることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子アニーリングとゲート型の量子コンピュータの融合を行う手法について、いくつか重要な提案を行うことができた。特に、量子アニーリングは基底状態探索が今までの研究のメインストリームであったが、ゲート型量子コンピュータと同様に、励起状態にも着目すべきだと我々は考えた。その結果、量子アニーリングの励起状態探索の実証にいたった。これは量子アニーリングの新しい方向を示すものである。また、Dwaveのデバイスは、コヒーレンス時間がいくら伸びても、誤り訂正機能付きのゲート型量子コンピュータは実現できないと多くの研究者は考えていた。我々はその予想を覆し、縮退を巧みに利用することで、Dwaveのデバイスでユニバーサルゲートセットが構成できることを示した。これはコヒーレンス時間さえ伸びれば、Dwaveのデバイスで誤り訂正機能付きのゲート型量子コンピュータが実現できることを意味する。量子アニーリングは集積性に優れるために、従来とは全く異なるアプローチで誤り訂正機能付きのゲート型量子コンピュータを実現する方向性を与えているという点で画期的である。またカーパラメトリック振動子は、量子アニーリングにもゲート型量子コンピュータにも使える、他に類を見ない素子である。この素子の性質を明らかにして、実験的に改善が進めば、本提案のゲート型とアニーリング型の融合プロトコルの実証が容易となる。そのため、このデバイスの理解は本プロジェクトにとって重要である。実験家と共同研究することで、このデバイスのcharacterizationを分光測定で行うこと可能になった。これはカーパラメトリック振動子の研究開発に重要な一歩である。る。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、量子アニーリングの活用法として、連続量に着目する。ボゾン系の特徴として、無限次元のヒルベルト空間を使えることがあげられる。これを利用して、連続量のコスト関数の最適化を目指す。従来は、Dwaveの量子ビットを用いて、(二進数展開などを用いて)連続量を離散に近似して、連続量のコスト関数を最適化していた。しかしこの従来のアプローチでは、高精度化のために、量子ビット数を増やす必要があった。我々の手法では、連続量をダイレクトに扱うために、高精度化のためにボゾン系の数を増やす必要がない点が、アドバンテージである。解くに、線形回帰とサポートベクターマシーンを、効率よく解く方法を検討している。また、ボゾン系と量子ビット系を組み合わせることで、コスト関数が、連続量と離散量の両方を持っている場合も、量子アニーリングで解くことを考える。また、ボゾン系のbinomial codeと呼ばれる手法にも着目している。このcodeでは、ゲート操作を行う際に、補助量子ビットが必要であった。そこで我々は、パラメトリックドライブとカー非線形性を用いることで、補助量子ビットなしでゲート操作を行う方法を提案した。その有効性をマスター方程式を数値的に解くことで確認する。また、カーパラメトリック振動子で量子アニーリングを行う際に、エネルギーギャップがどのように振る舞うかは重要な問題である。エネルギーギャップがわかれば、そこから断熱条件がわかり、スケジュールの最適化が可能になるからである。そこで我々は、カーパラメトリック振動子の量子アニーリング中に、位相の異なるパラメトリックドライブを印加することでラビ振動を起こし、その周波数空間を観測することで、エネルギーギャップを求める方法を提案した。
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