研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04396
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
馬渕 拓哉 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (10795610)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 分子シミュレーション / 人工DNAチャネル / イオン輸送 / 膜貫通 / 反応性MDシミュレーション / プロトン輸送 / Grotthuss機構 / 人工DNAチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
細胞膜中に存在するナノ細孔であるイオンチャネルは、細胞膜を挟んで細胞の中と外を行き来するイオンの流れを制御することで、生体内でのエネルギー活動の本質を担う重要な膜タンパク質である。イオンチャネルでは、特定のイオンのみを通すという選択性を持たせることで、細胞膜を出入りするイオンの種類を制御することが可能である。本研究提案では、DNAナノテクノロジーを活用し、分子シミュレーションを用いて膜貫通の制御因子およびイオン透過メカニズムを明らかにし、選択的イオン透過機能を有する人工DNAチャネルの理論設計に挑戦する。
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研究実績の概要 |
細胞内の複雑なイオンチャネルの構造や機能をDNAナノテクノロジーによる人工分子で再現し、イオン輸送を制御することを目指す。作りたい形状に合わせてDNAの塩基配列を設計することでチャネル構造を自在に設計でき、さらにDNAの末端に種々の分の修飾や機能構造の組み込みが可能なため、従来の人工分子と比較して柔軟性が高いことから近年研究が活発となっている。本研究では、分子動力学(molecular dynamics: MD)を用いて実験的に困難である人工DNAチャネル貫通領域を可視化することで、チャネル内のプロトン輸送現象および膜貫通現象を理論的に解析する。MD法には複数のモデルが存在し、扱う対象の粒度に応じて再現可能な現象の時間的・空間的スケールが大きく異なる。人工DNAチャネル内部のプロトン輸送現象は古典的な全原子MD法では困難である。そこで、化学反応の高精度な記述が可能である結合次数ポテンシャルを用いたReaxFFモデルを導入した反応性MD法を用いてチャネル内部における化学反応・物質輸送現象について解析を行う。当該年度はDNAチャネル内部のナノ細孔におけるGrotthuss機構を考慮したプロトン輸送現象をより正確に取り扱うために、化学反応のより高精度な記述が可能である結合次数ポテンシャルを用いたReaxFFモデルを新たに導入した。これまでの開発技術、知見を発展させ、ナノ細孔など閉じ込め系で特異的に見られるGrotthuss機構によるプロトン輸送時のエネルギー障壁を量子化学計算により抽出し反応力場を構築することで、従来モデルと比較して計算コストの犠牲は最小限に留めながら、高精度化を実現した反応性プロトン輸送モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工DNAナノ構造体を設計・構築が完了し、細孔内部のイオン輸送を解析する準備が整ったため。
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今後の研究の推進方策 |
反応性プロトン輸送モデルを用いて、カーボンナノチューブモデルおよび人工イオンチャネル細孔内におけるプロトン輸送現象を解析する。細孔径、屈曲度など形状を特徴づける構造パラメータとプロトンや他のイオン輸送特性との相関を明らかにする。さらに、ナノ細孔内部に種々の極性・非極性分子を修飾させ電荷分布を制御することで、細孔径による選択性だけでなく、イオン種による選択性の機能発現メカニズムを解明する。
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