研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04397
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松林 英明 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (00853061)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 人工細胞 / タンパク質光操作 / アクチン細胞骨格 / 脂質膜変形 / リポソーム / cDICE / 膜変形 / アクチン / 光応答性タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
脳は、複雑多様な細胞のネットワークによって、高度な情報処理を可能にしていると考えられている。このような高次のネットワークを人工細胞の集団で形成できれば、従来の人工細胞系では難しかった分子演算が可能になると期待される。そこで、本研究では、申請者が開発してきた細胞骨格タンパク質の光操作を発展させ、脂質膜の変形や人工細胞同士の配線パターンを人為的にデザインする基盤技術の開発を目指す。特に、脂質膜の局所的変形に必要な因子を探索し、人工細胞の操作技術として応用する。
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研究実績の概要 |
本研究では、リポソーム型人工細胞のネットワーク構築の方法の開発を目指している。本年度は、多数のリポソームを再現性良く、かつ、サイズを揃えて作成する方法の構築を進め、リポソームを収率よく作成できる条件が見出されたため成果が得られた。また、人工細胞のネットワーク構築にあたり、脂質膜の変形を操作する方法論の開発を目指し、関連するタンパク質の精製を進めた。当初予定していたタンパク質について、十分な量と精製度でタンパク質を取得し、進展があった。特に、膜変形活性があるタンパク質については、リポソームの変形および脂質膜チューブの形成が観察された。次年度、この膜変形の活性について、光制御する方法と条件の検討を進める予定である。アクチン関連タンパク質については、精製タグを改良し、複数種類のアクチン関連タンパク質を統一した方法で精製できるよう実験系を構築した。これについては、現在論文を投稿中である。このような精製法を確立したことで、当初予定にはなかったタンパク質についても並行して取得できたため、次年度、解析を進める予定である。タンパク質光操作についても、これまで用いてきた光応答性タンパク質のペアとは別の光応答性タンパク質について、リポソーム内での活性と光制御が確認できたため、進展した。次年度は、膜変形タンパク質、アクチンとアクチン関連タンパク質、そして、光応答性タンパク質、そしてリポソームを整列させる方法などの検討し、これらを組み合わせることで、リポソームの変形制御やリポソーム間の連結などへと進展させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工細胞のネットワークを作成する上で、サイズが揃ったリポソームを多量かつ高効率に作成する方法を用いることが望ましい。そこで、cDICEと呼ばれる実験系の再現を行なった。スピンコーターとシリンジポンプを組み合わせた実験装置によって、高効率にリポソームを作成する方法を見出し、各種パラメータを変えることで、リポソームのサイズを調節できることが確かめられた。今後、この方法で作成したリポソームをマイクロ流路系などに用いることを計画している。 また、リポソームの膜変形への寄与が期待できるタンパク質(10種以上)の精製を行なった。精製には、Hisタグ、GSTタグ、Strepタグを用い、イオン交換やゲル濾過を加え精製した。一部のタンパク質については、リポソームの変形機能を確認した。また、アクチン関連タンパク質の精製法については、論文投稿中である。今後、精製したこれらのタンパク質を組み合わせて、膜変形の制御を行うことを計画している。 リポソームの膜変形の光制御を可能にするため、これまで用いてきた光応答性タンパク質のペアとは別に、タンパク質光操作の再構成系の構築を新たに行なった。光応答性タンパク質を精製し、細胞サイズのリポソームに封入した上で結合タンパク質の膜移行によって光制御の活性を測定する実験系を構築した。共焦点顕微鏡によるスポットでの光照射のほか、青色光のLEDペンライトによる光照射に対する応答も確認された。 その他、主要な成果として、本研究の基盤技術であるアクチン重合の操作について、共著論文を発表した(PMID: 37734382)。またこの実験系をリポソーム型の人工細胞に応用し、結果をBioRxivで公開した(PMID: 37790449)。さらに、アクチンや膜変形などの細胞骨格機能の上流の制御に関わるPI3Kの新規機能を明らかにし、論文を発表した(PMID: 38521786)。
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今後の研究の推進方策 |
多数のリポソームの整列やその光操作について、検討する。マイクロ流路系などを用いて、複数のリポソームを整列させる条件を検討する。また、リポソームを整列させた状態で、特定のリポソームに対して光刺激を施し、同じ空間ないの一部の人工細胞のみが反応できる様な、光刺激と観察の条件を検討する。 リポソームの変形については、膜変形に関わるタンパク質の光制御系の構築を進める。特に、膜変形に対するタンパク質濃度や脂質組成の依存性を検討し、光のON, OFFに対して高いダイナミックレンジで反応する条件の探索を進める予定である。アクチン重合や束化因子を検討することで、膜の変形度やその頻度、可逆性についての影響を検証する。
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