研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04401
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00453499)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 細胞骨格 / モータータンパク質 / 微小管 / リポソーム / バイオナノマシン / ドロップレット / キネシン / 太陽虫 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞骨格タンパク質・モータータンパク質・細胞骨格関連タンパク質をリポソームに封入し、自律的に構築される高次構造体を生体分子アクチュエータとして機能させてリポソーム形態の変化を誘引し、形態変化を統御するシステムの理解を目的とする。アクチュエータの駆動装置としては、真核単細胞太陽虫の仮足様構造を模した細胞骨格の(脱)重合に伴う力発生を用い、制御機構としては、温度感受性細胞骨格や細胞骨格を切断/脱重合するモータータンパク質、及びDNAオリゴの相補性を利用した起動のon/offをそれぞれ用い、形態変化の可逆的な制御を目指す。
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研究実績の概要 |
タンパク質の相互作用能や自己組織化能、及び、DNAナノ構造体の制御能によって、主に細胞骨格からなる高次構造体をリポソーム内に構築し、そのリポソーム形態がダイナミックに変わる仕組みの実装、及び、それらを統御する分子システムの理解を目指している。本年度は、(1)細胞骨格依存性モータータンパク質、及び、対応する細胞骨格をリポソーム、または、作成が容易なドロップレットに封入し、細胞骨格の動態を定量できる実験系の確立、(2)DNAオリゴでモータータンパク質の運動方向を制御する方法検討、(3)cDice(continuous droplet interface crossing)法やマイクロ流路デバイスを用いてサイズが一様なリポソームを作成する方法検討についてすすめた。(1)に関しては、リポソームに封入したキネシンー微小管系では、温度に依存して、多数の突起構造が形成/消失する条件を検討し、3次元空間でその突起様構造体を解析する方法の開発に取り組んだ。ドロップレットに封入した、もしくは、ガラスチャンバー内のミオシン-アクチン系では、ドロップレット脂質膜Bleb様形態の形成と退縮を行う条件やアクトミオシンネットワーク構造の収縮する条件を見出した。ミオシンミニフィラメント、または、アクチンフィラメント切断タンパク質によるアクチンフィラメントの切断が、密度の高いアクチンネットワークの収縮を制御することを新たに見出した。(2)に関しては、キネシンのモータードメインをDNAオリゴを介してガラス基板に固定する技術を確立した。(3)に関しては、既に海外のグループから報告があるcDICEデバイスを3Dプリンターを用いて作成し、本研究で実施するタンパク質の組成・濃度でのリポソーム作成条件を検討し、また、研究協力者が開発したマイクロ流路デバイスを用いて、高濃度タンパク質を封入する方法の条件検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画のすべての項目を当初の計画通りに進めることができ、次年度における研究を推進する準備が整い、また、アクトミオシンネットワーク構造の収縮制御、及び、リポソームやドロップレットに内封するモータータンパク質・ミオシンに関する新規運動特性や温度感受性について明らかにし、国際学術誌に3報の論文として報告できたため。
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今後の研究の推進方策 |
リポソーム形態の変形を実現するため、微小管切断タンパク質や微小管結合タンパク質を封入し、微小管の重合・脱重合を制御する方法を検討する。微小管の滑り運動の方向制御には、キネシン分子による運動方向の制御を検討する。この制御には、キネシン-1モータードメイン、または、キネシン-14モータードメインの運動支点位置を変えることで運動方向を変える性質を利用し、DNAオリゴの選択で運動支点を変更することを試みる。また、アクトミオシン系では、ガラス基板上でのアクトミオシンネットワークが大きく変形する条件を参考に、作成が比較的容易なドロップレット内にリン脂質結合性ミオシンを内封して脂質膜と結合させることでドロップレットを変形させ、その作用機構を定量し、細胞骨格・モータータンパク質から構成される高次構造体変形の分子機構の解明を試みる。技術補佐員を1名雇用し、前年度から実施しているcDICE法とマイクロ流路デバイスを用いる方法の両方を用いて一定サイズのリポソーム作成方法、及び、リポソームサイズの制御の条件検討を行い、リポソーム作成の最適化をすすめる。
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