研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04403
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
水内 良 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (60845535)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
|
キーワード | 人工細胞 / 多細胞 / 分子通信 / ゲノム複製 / 無細胞翻訳系 / RNA / 液―液相分離 / 再構成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、RNAゲノムと無細胞翻訳系を封入した液滴を集合させて人工多細胞を構築し、各細胞での情報伝達分子 (タンパク質など) の生産と伝達によるゲノム複製の時空間制御を実現する。これにより、異なるゲノムをもつ人工細胞を同期させて統合する新たな基盤技術を開発し、多様な生物機能や情報処理能力を備えた複雑な分子システムの創出に繋げる。
|
研究実績の概要 |
本研究では、RNAゲノムと無細胞翻訳系を封入した液滴を集合させて人工多細胞を構築し、各細胞での情報伝達分子 (複製酵素) の生産と伝達によるゲノム複製の時空間制御を実現する。このために、近年開発した人工多細胞を改良し、内部で翻訳されたタンパク質の細胞間伝達を介したゲノム複製を達成する。人工多細胞を構成する各細胞 (液滴) はデキストランとポリエチレングリコールの液―液相分離により形成され、特定の脂質とタンパク質によって界面が安定化されている。本年度はまず、RNAゲノム (RNA 1) と精製した複製酵素それぞれを蛍光標識し、顕微鏡観察によって複製酵素が選択的かつ十分に拡散する条件を見出した。また複製酵素とRNAゲノム (RNA 2) を独立の液滴に封入して多細胞化したところ、複製酵素が別の液滴に拡散し、RNA 2を複製できることを見出した。特に、人工核酸を用いた分子ビーコンによって高感度かつ特異的にRNA 2の複製を検出できた。さらに、まだ伝達能に改善の余地はあるものの、人工多細胞中のある液滴のRNA 1から翻訳された複製酵素の伝達によって別の液滴のRNA 2を複製させることにも成功した。以上に加えて、人工細胞の界面における分子透過能を詳細に調べたところ、タンパク質だけでなく、より大きなRNA分子 (例えばRNA 2: ~750 nt) も僅かながら透過させられる可能性が示された。RNA自体を情報分子として用いた場合は、少しでも他の細胞に伝達すれば、複製によって直接的に情報の増幅が可能である。例えば液滴のRNA 2の濃度を調節することで、タンパク質とRNAゲノムの情報伝達能を制御し、これまで以上に複雑な人工多細胞レベルのゲノム複製が実現できるかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった人工多細胞における複製酵素の翻訳と伝達を介したゲノム複製を実証できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
知的情報処理分子システムで想定されるような、外部の情報分子 (基質) に応答した細胞内反応の駆動、また新たな情報への変換とその伝達が人工多細胞で可能であるかを検証する。またその基質を生産するRNAゲノムと組み合わせることで、細胞間相互作用に広く見られるようなフィードバックループの実装も試みる。さらに、小分子やタンパク質ではなく、複製可能なRNA分子自体の伝達による新たな人工多細胞レベルのRNA複製システムの開発も試みる。これは例えば、植物細胞におけるウイロイド (RNA複製体) の原形質連絡を介した伝達と複製 (感染拡大) などのモデルとして利用できる可能性がある。
|