研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
23H04411
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90293894)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | DNA光クロスリンク / DNA鎖交換反応 / 光リセット |
研究開始時の研究の概要 |
DNA鎖交換反応はDNA分子計算の基盤反応と位置付けられており、外部刺激により制御できれば、システムとしての多様性、挙動制御を実現できると考えられる。実際、酵素や人工核酸を用いた振動子や再利用可能なDNA回路構築などが報告されている。しかし、酵素や人工核酸を用いたDNA鎖交換反応では必ず1本鎖状態と2本鎖状態が混在し、ノイズとなっている。研究代表者は超高速DNA光架橋反応を既に報告しており、数秒の光照射によりDNA鎖間を架橋することができる。本研究ではこの超高速DNA光架橋を用い、DNA1本鎖状態と2本鎖状態を完全に制御することで、精密な化学反応回路構築への展開をおこなう。
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研究実績の概要 |
本課題は化学的アプローチによってDNAの1本鎖2本鎖状態を完全に制御することができれば、ノイズのないDNA鎖交換が可能となり、「C班:条件反射回路(肉、ベル系)への実装を通した光リセットの実現」や「スライム型分子ロボットへの走光性実装を通した異方性の実現」などに貢献できるのではと着想した提案となっている。2023年度は前者「C班:条件反射回路(肉、ベル系)への実装を通した光リセットの実現」への貢献を狙い今までにない光リセットの実現に向け研究を進めた。具体的にHEK293細胞におけるβアクチン蛋白質の5’UTRを対象とし、その配列に対して相補鎖となるCNVK含有アンチセンスODN Probeを用いることで,光によるβアクチン発現の促進が可能か調査した。細胞に対して光照射後インキュベーションしたものを採取し、ウエスタンブロッティングによりβアクチンの発現量を内部標準タンパクGAPDHの発現量と蛍光比率を用いて比較することにより評価した。その結果数倍ではあるが特定の蛋白質の発現を光を用いて促進できることを確認した。このことは光リセット機能を活用することで遺伝子の発現をOFFではなくONにできることを示唆しており、新しい光スイッチの開拓に成功したと考えられる。また後者「スライム型分子ロボットへの走光性実装を通した異方性の実現」についても2本鎖DNAに対する光操作法の開発についても取り組み、400塩基以上の長さのDNA2本鎖に対して新たなDNAを侵入させる光駆動型2本鎖DNA侵入法の開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本学術変革領域において核酸回路を光制御する技術は重要であると考えられ、自身提案時には一つの狙いとして「C班:条件反射回路(肉、ベル系)への実装を通し光リセットの実現」を目的の一つとしていた。これまで多くの関連研究者は光クロスリンクや光異性化を用いて光リセットすることには成功していたが、それらはONとなっていた回路をOFFにするものであった。今回、核酸反応回路のモデルとしてHEK293細胞におけるβアクチン蛋白質の発現系を用いたうえで、βアクチン蛋白質の5’UTRを対象としてその相補鎖となるCNVK含有アンチセンスODN Probeを用いれば,光によるβアクチン発現の促進が可能であることを見出した。光リセット機能の活用次第で難しいとされていた反応回路のONへのスイッチングに成功したと考えており、複雑な反応回路の光制御に向けて有意な研究成果と位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
本申請では超高速DNA光架橋を用い、DNA1本鎖状態と2本鎖状態を完全に制御することで、精密な化学反応回路構築への展開をおこなう予定である。あらかじめ応答波長の異なる2つの光架橋素子(X、Y)を組み込んだ多機能ODNを用いる予定で、Xとしてチミン特異的光架橋素子:メチルピラノカルバゾールヌクレオシド、Yとして従来用いてきたシアノビニルカルバゾールヌクレオシドを想定している。DNA鎖交換反応の光制御において、366 nmの光照射により、状態A(架橋一箇所)から状態B(架橋二箇所)へ戻ることなく定量的に進行し、ODN-Aが消費されODN-Bが押し出される形で置き換わるかどうか確認をまずおこなう。400 nm、312 nmの照射時にYは開裂方向へ、Xは架橋・開裂の両反応が進行するため、ODN-Bが消費されODN-Aが押し出されといった光可逆的なスイッチングが可能かどうか検証する。そして最終的に「スライム型分子ロボットへの走光性実装を通した異方性の実現」などへの貢献を目指す。
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