研究領域 | 貧困学の確立:分断を超えて |
研究課題/領域番号 |
23H04436
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 弘通 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20399231)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 子どもの貧困 / 内在化問題 / 外在化問題 / 抑うつ / いじめ / 問題行動 / 媒介・調整要因 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 発生と継続 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、貧困と子どもの問題行動の関係を媒介・調整する要因を明らかにし、貧困がどのようなメカニズムで、子どもの様々な問題を引き起こし、維持するのかを検討する ことである。それにより、貧困自体の克服が第一の課題であることはもちろんだが、貧困状 態のなかにある子どもたちが問題行動によって、さらに不利な状態に陥らないために必要な 支援・施策とは何かを考える。その際に「貧困であるがゆえに問題行動が生じる」という発生論的視点と、ある問題行動が起きたとき、「貧困であるがゆえにその問題行動の解決が困難になる」という継続論的視点の2つの視点から検討する。
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研究実績の概要 |
2023年度の調査計画は以下の2点であった。(1)国内外の子どもの貧困にかかわる先行研究をレビューし、子どもの貧困と問題行動を媒介・調整する要因を絞り込むこと。それを参考に(2)北海道・札幌市の子どもの生活実態調査のデータを用いて、子どもの貧困と問題行動の関係を媒介する要因を実証的に検討することであった。 (1)の結果、子どもの貧困と問題行動の関係を調整する要因として、性別が重要な要因であるにもかかわらず、先行研究における検討が不十分であることが分かった。そこで(2)については、内在化問題を代表する抑うつを従属変数に設定し、独立変数に所得階層と暮らし向きの認知、そして調整要因に性別、加えて学年を設定し、貧困が抑うつに与える影響の男女と学年による違いを検討した。 その結果、以下4つのことが明らかになった。1つは、所得階層と暮らし向きの認知は、学年が上がるごとに一致度が高まる一方で、いずれの学年も女子においてより一致度が高かった。2つは、所得階層そのものよりも、暮らし向きの認知のほうが、子どもの抑うつに大きな影響を与えていた。3つは、所得階層と暮らし向きの認知と抑うつの関連については、いずれにおいても女子のほうがより強い関連が見られ、また抑うつの得点自体も高かった。最後に4つは、小学生の女子において、暮らし向きの認知と抑うつに強く関連していた。 したがって、貧困が子どもの問題行動に与える影響を調整する要因として、性別及び学年が考えられ、特に年齢の低い女子において、貧困の影響は問題行動と強く関連する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に予定していた2つのこと、(1)国内外の子どもの貧困にかかわる先行研究をレビューし、子どもの貧困と問題行動を媒介・調整する要因を絞り込むこと。それを参考に(2)北海道・札幌市の子どもの生活実態調査のデータを用いて、子どもの貧困と問題行動の関係を媒介する要因を実証的に検討することが予定どおりに進んでいると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針としては、以下2つを考えている。1つは、外在化問題における貧困と問題行動を媒介する要因の検討である。2023年度は、主に内在化問題(抑うつ)と貧困の関係を検討したが、2024年度は、いじめと貧困、及びそれらを調整する要因を検討することで、貧困と外在化問題の関係を明らかにしていく。 2つは、貧困が子どもの問題行動の解決を阻害する可能性を検討することである。貧困は、子どもの問題行動を引き起こすといった発生のみならず、いったん発生した問題を解決しにくくする側面もあると考えられる。そのため、2024年度は、いじめに関する調査を行い、貧困が問題行動の解決を阻害する可能性について検討する。
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