研究領域 | データ記述科学の創出と諸分野への横断的展開 |
研究課題/領域番号 |
23H04464
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白岩 隆行 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10711153)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | パーシステントホモロジー / 転位動力学 / 結晶塑性 / 相連結性 / 力学特性 / マグネシウム合金 / 金属複合材料 / ナノ複合材料 / 鉄鋼材料 / 転位 / アコースティックエミッション / ベイズ推定 |
研究開始時の研究の概要 |
転位運動に伴い放出される弾性波を計測し、それと同時に離散転位動力学(DDD)シミュレーションを行い、観測データと数値解析モデルをデータ同化することで、材料中の転位運動の時系列データを取得する。また微視組織を記述するには、外部の荷重や電位場に対する異方性が重要なので、パーシステントホモロジーに異方性の概念を取り入れ、「微視組織記述子」を定義する。ランダムに生成した組織に対して前述の順解析を行い、微視組織記述子と材料特性のデータベースを構築する。さらに記述子を説明変数として、ベイズ最適化などの最適化手法を用いて、微視組織記述子空間を探索し、より性能の高い材料組織の発見を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、パーシステントホモロジーにより金属材料組織の「かたち」を記述することで、優れた性能(高強度、高延性、高導電性、etc.)を持つ金属材料を探索することである。2023年度は、Mg合金と鉄鋼材料、金属基複合材料(Cu/Nbナノ積層材)を対象に解析を進めた。 Mg合金については、軟質(α-Mg)相と硬質(LPSO)相から成る二相合金を対象とした。相の体積分率が異なる2種類の材料を準備した。具体的には、Mg94Zn2Y4鋳造材(LPSO相の体積分率40%)とMg94Zn1Y2鋳造材(LPSO相の体積分率25%)を用いた。それぞれ、室温大気中で圧縮試験を行い、試験の前後でマイクロX線CTにより内部の3次元構造観察を行った。その観察結果をもとに、X線CTでは吸収コントラストにより二相を区別できるため、デジタルボリューム相関(DVC)法を適用することで、材料内部を含めたひずみ分布を3次元的に取得した。またX線CTの画像から二相の3次元構造を再構築した。以上をもとに、入力に局所三次元二相構造、出力に局所ひずみを置いて、深層学習を行った。得られた深層学習モデルをOcclusion法により逆解析することで、硬質相の連結性が、マクロな材料強度において重要な役割を果たしていることが示された。これらの研究成果は海外ジャーナルに投稿した。 鉄鋼材料については、フェライト相とマルテンサイト相からなる二相組織鋼(DP鋼)のボイド発展をパーシステントホモロジーを用いて解析した。詳細は、金属学会での発表資料をご参照いただきたい。 複合材料については、高い導電性と引張強度を併せ持つ、Cu/Nbナノ積層材を対象とした。有限要素法により、導電性と引張強度を計算し、それらのデータセットに対して、パーシステント図を記述子とした最適化を行った。詳細は国際会議PRICM11の発表資料をご参照いただきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグネシウム合金に対して、ラボレベルのX線CT装置でデジタルボリューム相関(DVC)解析を行い、材料内部を含むひずみ分布を取得できた。金属材料に対するDVC解析は、一部のアルミニウム合金では析出物をマークに用いて行われてきたが、マグネシウム合金で成功した例は国内外でもあまり見当たらず、画期的な成果と言える。その実験観察データを用いて、深層学習ベースの解析を行うことができた。その結果、微視組織スケールの連結性がマクロな力学挙動に対して重要な役割を果たすことが示された。鉄鋼材料については、引張特性において重要なボイド発展が二相の空間的な配置により支配されていることを、パーシステント図ベースの解析により示すことができた。Cu/Nbナノ積層材については、有限要素解析によりシミュレーション結果に対して、パーシステントホモロジーを用いて解析を行い、微視構造を定量化することができた。その結果、導電性と引張強度のトレードオフを表すパレートフロントを示すことができた。 以上から、研究の進捗はおおむね順調であり、一部では計画以上の進展があったと判断する。 成果発表については、国内外での学会発表を精力的に行うことができ、予定以上の件数の発表をすることができた。論文発表については投稿まで行うことができたが、論文掲載は年度内にわずかに間に合わなかった。 以上を総合して、「(2)おおむね順調に進展している」が適当と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Mg合金の構造-特性連関ついては、LASSOによるスパース回帰や1次・2次のパーシス点図を用いた解析を含めるなど、さらに解析を進める。 鉄鋼材料については、パーシステント図を記述子とした機械学習モデルの物理的な意味を解釈するために、逆解析を行う。 Cu/Nbナノ積層材については、二相の空間配置だけではなく、その結晶粒形状や結晶方位を含めた解析(結晶塑性有限要素解析)を行い、それらをデータベースとして用いる。
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