研究領域 | データ記述科学の創出と諸分野への横断的展開 |
研究課題/領域番号 |
23H04475
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20512627)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 概日リズム / 微分幾何 / 波形 / 曲率 / Goodwinモデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究提案は時間生物学で捨てられてきた時系列データの「かたち」の情報の中に概日リズムの記述子を見出す。「うごき」と「かたち」を同時に解析する数学上のツールとして、勃興する微分幾何学のパラメータ付き曲線論を用いる。データとしては、バクテリアおよび植物の一細胞の概日リズム計測を専門とする申請者が保有する多数の24時間周期の遺伝子発現データを解析する。特に曲率に注目した解析手法を開発し、環境および遺伝情報の変化と時系列データのかたちの変化を対応づける。またリズム波形を正確に取り出すための実験的手法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
実施事項1 調和振動/緩和振動らしさの定量化手法の開発 概日リズムの調和振動子らしさ、緩和振動子らしさを定量化する。予備的知見で用いたSNIC分岐標準形モデルの考察を深め、調和振動/緩和振動らしさを表すパラメータμと曲率の対応について考察を深めた。また概日リズムのモデルとして知られているGoodwinモデルについて、理論の一般性に注意して確認を行った。 実施事項2 シアノバクテリア1細胞概日リズム波形の精緻化技術の開発(応用) 申請者が研究対象とするシアノバクテリア概日リズムにおいて、もっともノイズの少なく明確な波形データを得るには蛍光顕微鏡による1細胞の概日リズムを観察することが適切である。しかし、式で示したように曲率の値の観察には、時間の3階微分が含まれている。これまでの計測手法では1時間に一回程度の時間間隔でリズムを観察するのが伝統的な方法であるが、3階微分を精度よく求めるには、時間分解能をあげるには、克服するべき実験技術の改善がある。たとえば、蛍光タンパク質を用いて遺伝子発現量を観察する際に、励起光を細胞に照射する。しかし励起光自体が光障害と呼ばれる作用を引きおこし、また概日時計自身にも影響を及ぼすので、いくらでも時間分解能をあげることはできない。そこで励起光の波長・照射量・照射時間の最適化の検討を行い、高い時間分解能を得ることができた。これにより、シアノバクテリアの時間生物学において、もっとも時間分解能の高いシアノバクテリア1細胞レベルの遺伝子発現リズムを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施事項1 調和振動/緩和振動らしさの定量化手法の開発 共同研究者である長崎大学の加葉田氏との議論を重ね、非緩和的振動という概念の導入によって、生物リズムを分類するというアイデアに到達した。特に概日時計の中心振動体のモデルとしてよく使われるGoowdinモデルを利用して、その軌道の曲率について、数値的解析を行い、いかなるパラメータでもz-dz/dt平面上での軌道が凸となることを明らかにした。また、解析的にこれを示すための方策を検討し、モデル中ヒル係数最大の極限のモデルで、検討を行った。曲率負を保つための初期値の集合を明らかにした。
実施事項2 シアノバクテリア1細胞概日リズム波形の精緻化技術の開発 実験系のリファインを行い、高精度でシアノバクテリア概日リズムが観察する系の開発に成功した。また顕微鏡画像の解析についても改善を行い、セグメンテーションとリンキングの自動化を行うプログラムの開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
実施事項1 調和振動/緩和振動らしさの定量化手法の開発 概日リズムの調和振動子らしさ、緩和振動子らしさを定量化する。数値的シミュレーションから得られた曲率の変化と調和振動/緩和振動らしさを対応づける機械学習のモデルを作成し、曲率が「記述子」としての役割を果たすことを示す。 実施事項2 シアノバクテリア1細胞概日リズム波形の精緻化技術の開発(応用) 申請者が研究対象とするシアノバクテリア概日リズムにおいて、もっともノイズの少なく明確な波形データを得るには蛍光顕微鏡による1細胞の概日リズムを観察することが適切である。時間分解能をあげるために光障害の少ない蛍光タンパク質への転換、励起光の波長・照射量・照射時間の最適化の検討をさらに行い、数分オーダーの時間分解能を得ることを目指す。温度変化、照度変化による概日時計の波形の変化を観察する。
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