研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04502
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 (2024) 名古屋大学 (2023) |
研究代表者 |
山本 貴宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (70972016)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 重力波 / 深層学習 |
研究開始時の研究の概要 |
一般相対性理論によればブラックホールは準固有振動をもち,その振動数と減衰時間はブラックホールの質量とスピンから一意に定まる.連星ブラックホール合体後にできたブラックホールから放出されるリングダウン重力波はこの準固有振動で記述されていると考えられており,リングダウン重力波は一般相対性理論の検証に適している.本研究では深層学習を用いてリングダウン重力波に特化したデータ解析手法を開発し,一般相対性理論を検証することを目標とする.本研究によって,リングダウン重力波からブラックホール近傍での情報を引き出すことができるようになり,新たな重力理論の構築につながる観測的な手がかりが得られると期待される.
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研究実績の概要 |
ブラックホールの微小な歪みから放出されるリングダウン重力波は、ブラックホールの準固有振動によって占められていると考えられている。一般相対性理論によれば準固有振動の振動数と減衰時間はブラックホールの質量とスピン(自転の速さ)だけで決まる。この性質を用いると、連星ブラックホール合体後のリングダウン重力波を用いた一般相対性理論の検証ができる。しかしブラックホール合体後、どの時点からリングダウン重力波が開始したかは明確な境界が存在しないため、データ解析の観点から言えば、重力波観測データからブラックホール準固有振動の振動数・減衰時間を推定することは単純ではない。本研究では、深層学習を用いて合体からリングダウン重力波までの遷移過程をデータそのものから学習・モデル化し、実際の連星合体重力波イベントを用いて一般相対性理論の検証を行うことが目的である。 深層学習ではニューラルネットワークと呼ばれる推定器を用いて回帰問題などを解く。ニューラルネットワークは重力波データを入力として、準固有振動の振動数と減衰時間を出力するように設計する。実際のデータに適用する前に、大量の模擬データを用いて内部パラメータを最適化する必要がある。ニューラルネットワークの性能はこの模擬データをどのように作成するかに大きく依存する。本研究の目的に照らせば、準備する重力波波形は一般相対性理論だけではなく他の重力理論による波形も含めたようなものでなくてはならない。本年度では、模擬データとして用いる模擬的な重力波波形の設計を行い、模擬データの作成を行なった。一般相対性理論に基づいて生成された重力波波形のうち、合体時刻以降の部分だけを模擬的に修正することとし、そのためのパラメトリックなモデルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訓練データに用いる模擬的修正波形のモデルを作成し、実装した。またLIGO-Virgo-KAGRAコラボレーションが公開している第三期観測運転までに得られた観測データから、実際の検出器ノイズを取得し、波形を注入することで模擬データを作成するためのコードを実装した。そして、これらのコードを用いて模擬データを作成した。ニューラルネットワークの訓練をするための準備が十分整備された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度でニューラルネットワークの訓練をする前段階の準備は整えたので、今後はこれを用いてニューラルネットワークを訓練し、模擬データで性能評価を行う。そして訓練したニューラルネットワークを用いて、LIGO-Virgo-KAGRAコラボレーションが第三期観測運転までに発見した重力波イベントの解析を行い、リングダウン重力波から準固有振動の振動数と減衰時間を推定する。また実際の修正重力理論と得られた結果との対応づけを理論的に考察することで、修正重力理論への制限を与える。
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