研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04525
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
北村 遼 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究職 (10838379)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 大強度ビーム / ビームモニタ / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、大強度ビーム加速における空間電荷効果への定量的な評価や、ビームハローに起因するロスの低減といった問題に対して、機械学習を用いたビーム物理研究への新たなアプローチの開拓を目指すものである。 具体的には、大強度リニアックの前段部輸送系をモデルケースとして、プロファイルモニタで測定できる時空間方向の2次元プロファイルの画像データから、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)でビームの特徴量である位相空間パラメータの推定手法を開発する研究である。また、CNNによるパラメータの推定精度や計算コストの観点から、ビームプロファイル解析への画像認識導入の妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による画像認識を利用して、ビームモニタで測定したプロファイル画像からビーム位相空間の特徴量であるTwissパラメータとエミッタンスといったビームパラメータを推定する手法の開発を目指す。空間電荷効果の影響が大きいリニアック前段部の大強度低エネルギービーム輸送系において、モニタで実際に測定される領域のビーム分布情報からビームパラメータを推定するCNNの開発を進めている。令和5年度は、CNNの学習に使うプロファイルデータについて、J-PARCリニアックで用いられている3次元Particle-In-Cellコードを用いて縦方向と横方向のビームサイズの定性的な変化を検証した。研究に必要な計算環境を構築するための新たな計算機等の計算資源を調達して、学習用データを生成するためのビームシミュレーション用計算環境及び機械学習用の計算環境の整備を進めている。機械学習の計算環境整備については、シンクロトロンでの縦方向測定においてCNNを利用した機械学習アルゴリズムを構築した実績のある研究者に協力を仰ぎ、tensorflowを用いたCNN計算環境の構築を進めている。令和6年度に、初期ビームパラメータをランダムに設定したプロファイル画像データ群をビームシミュレーション用環境にて生成する。生成したデータ群は機械学習用計算環境にてCNNの学習と、学習効果の検証に利用する。学習したCNNを用いてビームパラメータの推定精度及び実測したビームプロファイル画像への適用可能性などを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
機械学習の計算環境整備において、当初計画ではビームシミュレーションと機械学習の計算を同じプラットフォームで実行できる開発環境の構築を進めた。しかし、データ生成や計算機運用の都合から、ビームシミュレーション環境と機械学習の環境をハード的に分離する必要性が生じた。そのため、新たに計算機及び関連する機器の機材手配を実施するなど、計画変更があった。令和5年度にて個々の計算環境を整備するために必要な機材の手配は完了しており、今後改めて計算開発環境の構築を進めていく。ただし、将来的には両者を統合した計算環境を構築することが望ましいため、環境構築に必要な情報収集と同様の研究を進めている研究者との情報交換を継続して進めている。また、研究所内のネットワークを使用するにあたり、使用するソフトウェアのバージョン管理にも注意する必要があることがわかり、関係者と適宜連絡をとりつつ計算機の運用に支障をきたさないよう今後の研究を推進する。以上のことから、現在までの進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、機械学習に必要な計算環境の整備を進めるにあたり、関連する先行研究で実績のある研究者と緊密な連携をとり、協力を仰ぎつつCNNの開発を進めてきた。また、機械学習に必要なビームシミュレーションデータの作成準備において、シミュレーションの結果から当初の予想以上に外部収束力の変化による縦横分布の相関の応答が鈍い可能性がわかった。そのため、令和6年度ではテストスタンドのビームモニタを用いたビーム測定実験に基づくシミュレーションデータの検証など実験的なアプローチの必要性も検討する予定である。また、CNNの計算環境構築において、計算機能強化等のために追加の計算機及び関連部品が必要となる可能性も想定される。追加の機材調達により生じうる計画の遅延を最小限とするため、丁寧な計算環境の整備、検証、確認を継続する。さらに関連分野の研究者と研究会などを通じた密接な情報交換及び協力関係の構築を継続する。
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