研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04538
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
尾崎 太郎 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (40709060)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 天然物化学 / 生合成 / 酸化酵素 / ペプチド / 酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
糸状菌(カビ)が生産するペプチド系天然物の生合成研究から見つかった新たなタイプの酸化酵素UstYaに着目して研究を行う。本酵素ファミリーは多様な酸化反応に関わることが報告されているが、その反応の詳細は未解明である。本研究課題では、ゲノムマイニングにより機能未知のUstYaホモログを探索し、異種宿主内で発現させることでそれらの機能解明及び新規天然物の獲得を試みる。これらの解析と並行して酵素の機能解析を進めることで、本酵素ファミリーの利活用に向けた知見を集積する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、糸状菌に見出された新規酸化酵素ファミリーUstYaの機能開拓を目的としてゲノムマイニングを実施する。2023年度は、UstYaを含む生合成遺伝子クラスターを複数選定し、麹菌を宿主とする異種発現系を利用して機能解析を検討した。解析を行った遺伝子クラスターのうち、一つで生成物を確認することができたため、さらに解析を進めた。本遺伝子クラスターには骨格構築に関わる非リボソームペプチド合成酵素遺伝子が含まれており、この遺伝子を基質供給のための遺伝子とともに麹菌内で共発現したところ、LC-MSで生成物を確認することができた。さらに、5種のUstYa遺伝子を含む遺伝子クラスターに含まれる他の生合成遺伝子を共発現したところ、上記の生成物からさらに変換が進んだことを示唆するピークを確認した。生合成遺伝子の組み合わせを変えて形質転換体を作製し、各形質転換体の代謝産物を比較することで、非リボソームペプチド合成酵素により生合成されたペプチドが複数のUstYaにより変換される経路を推定することができた。続いて、各代謝産物のm/z値から推測される化学構造をもとにUstYaを考察した結果、アミノ酸残基側鎖のヒドロキシ化などこれまでに知られているUstYaの機能に加え、新たなタイプの変換が示唆された。各生成物のMSフラグメントの解析等からも仮説が支持された。現在、各生成物の単離と構造決定を進めており、NMR等の分光学的解析により化学構造を決定することで、生合成経路及び解析対象としたUstYaの機能を明らかにできるものと期待される。 以上の研究成果について、日本農芸化学会2024年度東京大会及び日本薬学会第144年会の一般講演として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
候補として解析を進めた研究対象のうち、一つで異種発現により生成物を同定することができた。研究の目的として、UstYaの新たな機能を開拓することを挙げているが、これまでに知られていない新たな機能を示唆する結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
初めに2023年度に構築した形質転換体から代謝産物を精製し、NMRや質量分析を用いて化学構造を決定する。続いて、単離した化合物を基質として、標的とするUstYa発現形質転換体による微生物変換実験や、無細胞抽出液を用いた酵素活性の検出を検討する。酵素活性が検出できた場合は、補酵素要求性の調査や活性化区分の分画などを行い、酵素の諸性質を調査する。 これと並行して、骨格構築酵素としてポリケチド合成酵素を含む生合成遺伝子クラスターなど、これまでに解析例のない標的を選定し、機能解析を進める。
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