研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04564
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 俊二 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (30311608)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | AI / 二次代謝産物 / 生合成 / 分子間相互作用 / メタボロン |
研究開始時の研究の概要 |
微生物に仕組まれている未知の二次代謝生合成酵素反応を見出し精密に解析することによって、医薬・農薬等に利用可能な天然化合物の構造多様性を創出する基盤を構築することは、ポストゲノム・予測生物学時代の重要課題である。申請者は、有用化合物を生産する放線菌のゲノム解読と機能アノテーションを行い、多様な生合成遺伝子群を見出している。本研究では、独自に見出した天然化合物の機能未知の生合成遺伝子に着目し、データベースを活用した遺伝子構成の比較、蛋白質構造の推定と機能ドメインの予測、酵素間の相互作用の予測と実証により、総合的に生合成機構を解明し、多様な遺伝子資源を化合物資源へと変換する基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
微生物に仕組まれている未知の二次代謝生合成酵素反応を見出し精密に解析することによって、医薬・農薬等に利用可能な天然化合物の構造多様性を創出する基盤を構築することは、ポストゲノム・予測生物学時代の重要課題である。本研究では、独自に見出した天然化合物の機能未知の生合成遺伝子に着目し、データベースを活用した遺伝子構成の比較、蛋白質構造の推定と機能ドメインの予測、酵素間の相互作用の予測と実証により、総合的に生合成機構を解明し、多様な遺伝子資源を化合物資源へと変換する基盤を構築することを目的とした。 第一に、放線菌由来の機能未知 type II PKS 遺伝子クラスターの覚醒を目的として、内在する転写制御因子の発現を検討したところ、予想外の遺伝子クラスターが誘導され、新規エラスニン類縁体の取得に成功した。本菌のゲノム情報とこれまで知られているエラスニン生産菌のゲノム情報との比較により、生合成遺伝子クラスターを見出すことが出来た。次に、リベロマイシン(RM)生合成に関わる酵素の分子間相互作用解析を行った。RM生合成の最終段階は3つの酵素が関与するサクシニル化反応である。分子間相互作用は強固ではなく、酵素複合体の結晶構造解析によって結合領域の情報を取得出来ないため、構造推論プログラムAlphaFold2を駆使して、分子間相互作用領域を予測し、候補モデル構造の中で、最もpTM-scoreの高いモデル構造を抽出した。複合体間で形成される水素結合に着目し、相互作用に関わると推定されるアミノ酸残基をアラニンに置換した部位特異的変異酵素を調製し、複合酵素活性を評価することによって、鍵となる酵素間領域を見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では以下の2課題の研究が順調に進展している。1)機能未知の生合成遺伝子クラスターの解析では、ゲノム解読、制御因子の導入、新規化合物の単離、同定、生理活性の検討まで研究を進めることが出来た。今後の遺伝子発現解析、機能未知酵素の解析を計画通り進めることができる。また、2) 分子間相互作用予測と検証では、構造推定プログラムを用いて新たな相互作用領域を見出すことに成功しており、次の検討課題が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
1) 機能未知の生合成遺伝子クラスターの解析:昨年度に引き続き、放線菌ゲノム解析によって得られたヌクレオチド系抗生物質及びポリケチド化合物の生合成遺伝子の解析を継続して行う。生産菌を用いて、目的の遺伝子破壊株に蓄積する中間代謝物を解析する。同時に、AlphaFold2を用いた未知酵素の立体構造予測と類似構造を有する蛋白質との比較、想定基質を用いたドッキング解析を行う。また、機能予測に基づき、標的の生合成酵素を異種発現・精製し、想定基質を用いて生化学反応を検証する。 2) 分子間相互作用予測と検証:リベロマイシン生合成の最終段階のサクシニル化反応は有機合成では超高圧下(1.5Gpa)での反応が必要となる極めて困難な反応である。これまでに、AlphaFold2を用いることによって、反応に必須の3つの酵素間で分子間相互作用の検出に成功している。本年度も引き続き、構造推定プログラムを駆使して、分子間相互作用を推定するとともに、進化的に保存されているアミノ酸領域にも着目する。部位特異変異を導入し分子間相互作用及び酵素反応効率を検証する。
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