研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04576
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 正寛 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (90425570)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | キラル光 / 角運動量の転写 / 超伝導体と渦 / 磁性体と磁気欠陥 / 2色レーザー / 光渦 / トポロジカル欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
超伝導体には巨視的波動関数、磁性体には長波長スピン波という原子サイズより圧倒的に大きな実体が存在する。それ故、多彩な物質中で超伝導体と磁性体は、マイクロメートル以上に広がった波面をもつ光渦から角運動量やエネルギーを授受する格好の素材といえる。佐藤は2017年に世界初で光渦による磁気欠陥の高速生成法を微視的に提案し、その後も光渦の応用法の理論を発展させている。この優位性を活かし、光渦による超伝導体と磁性体の渦生成や素励起発生についてのミクロ理論を打ち立て、光渦によるキラル光物質科学の学理を構築するとともに、次世代の情報担体となり得るスキルミオンや超伝導渦の光渦制御法を提案する。
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研究実績の概要 |
本年度の最も大きな成果は、テラヘルツ(THz)帯光渦レーザーを超伝導薄膜に照射しヒッグスモード(超伝導体特有の集団励起)を強励起する方法をミクロな数値解析に基づき提案したことである。この成果はPhysical Review Research誌(オープンアクセス)に出版済みである。さらに、この研究を発展させた解析にも取り組んでいる。上記研究では、巨視的波動関数と呼ばれる超伝導体の秩序変数についての低エネルギー理論に基づく解析を行っているが、これにフェルミオン準粒子(電子とホールの類似物)も加えた、すべての励起を取り込んだミクロ理論に基づく超伝導体の光渦応答の解析に現在取り組んでいる。この成果は2024年度に出版できる見込みである。 また、光渦とは別の空間構造を持つ光源として、2色レーザー(2種の周波数の異なるレーザーの合成波)による光応答の解析も進めている。2色レーザーをグラフェンに照射することで初めて生じる光整流や高次高調波発生を、密度行列に対する量子マスター方程式に基づき解析している。この成果も2024年度中に学術誌に出版できる見込みである。 これらとは別に、キラル光との直接的関係は深くはないが、広い意味で将来「キラル光による磁性体の高速制御」に貢献できる成果として、反強磁性体の熱的スピン流生成のミクロ理論(J. Phys. Soc. Jpnに出版)、強電場による磁気異方性とトポロジカルスピンテクスチャの生成制御法の提案(Physical Review Research誌に出版)の成果も挙げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画では予定していなかった研究テーマも含めて、現在「キラル光物質科学」と深く関連する4つのテーマが進行中または計画中である。(1)秩序変数と準粒子を含んだミクロ理論による超伝導体の光渦応答の解析、(2)2色レーザーによるグラフェンにおける光整流と高次高調波発生の理論、(3)キラル光の電磁波と加熱効果によるトポロジカル磁気欠陥の高速生成法の提案、(4)キラル光の加熱効果による超伝導体渦生成法の提案、が4つのテーマである。(1)(2)の解析は順調に進展しており、(3)(4)は解析を開始した段階と言える。これらの研究において今後も順調に成果がえられれば、当初の計画通り、または、それ以上の成果がこの2年間で得られることになる。
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今後の研究の推進方策 |
超伝導体における光応答に関する研究は、大阪大学水島氏のグループとの共同研究で推進している。今後とも水島氏と協力することで効果的に研究を進めていく予定である。 2色レーザー及び磁性体に関わる研究は、申請者の研究室で申請者と大学院生が協力して取り組んでいる。日々、大学院生と密接にコンタクトを取ることで相互理解を深めて、研究の質を高めていくことを目指す。
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