研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04582
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横内 智行 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, ユニットリーダー (20823389)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | スキルミオン / 超螺旋光 / 光渦 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、渦状のキラルスピン構造である磁気スキルミオンが学術・応用の面から注目を集めている。スキルミオンをデバイス応用する観点からは、任意のキラリティーを持つ単一スキルミオンを任意の場所に作ることが重要であるが、電流や磁場といった従来スピン構造の制御に用いられてきた外場では実現が困難であると考えられている。そこで本研究では、近年新たに発見されたスキルミオンが安定化する磁気光学材料に着目し、超螺旋光を用いて、任意のキラリティーを持つ単一スキルミオンを任意の場所に作成することを目指す。具体的には、円偏光によるスキルミオン生成・光渦の巻き方によるスキルミオンのキラリティーの制御を目指す。
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研究実績の概要 |
後で入力本研究では、超螺旋光を用いて、任意のキラリティーを持つ単一のスキルミオンを任意の場所に作成することを目指している。2023年度は近年、数マイクロオーダーのバブルスキルミオンの形成が報告されていた磁気光学材料であるMnBiを対象に研究を行った。 まず、MnBi単結晶をセルフフラックス法で合成することに成功した。先行研究において、バブルスキルミオンが観測されたのは、厚さがマイクロオーダーのMnBi試料である。そこで、合成した単結晶試料をへき開することで、数十マイクロメーター程度の微小な試料を準備した。そして、MnBiの磁気構造を磁気光学カー顕微鏡により実空間観測し、バブルスキルミオンを含む、先行研究と類似の磁気構造の観測に成功した。 その後、偏光を制御しながら、レーザーを照射できるように磁気カー顕微鏡を改造した。そして、改良した光学系を用いて、実際にレーザーを照射した際の、磁気構造の変化を観察した。当初は、円偏光を照射した際に、磁気構造が変化すると予想したが、磁気構造の変化は観測できなかった。その原因として、一つ目はレーザーパワーの不足があげられる。そこで、今後はより高出力のレーザー光源を使用するとともに、よりレーザー光を就航できるように光学系を改良する。また、二つ目の原因として試料の厚さが厚いという点があげられる。そこで、微細加工技術により、MnBiの厚さを百ナノメートルオーダーまで薄くするとともに、スキルミオンが形成する薄膜において実験をすることを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、当初の研究計画に従って、MnBi単結晶の作成と磁気構造の観察、さらにレーザーを照射した際に磁気構造がどのように変化するかを観察した。これらの研究項目は、当初の計画通りであり、順調に研究が進められているといえる。 一方で実験の結果、本研究の目標である、円偏光を照射した際の磁気構造の変化は、現時点で観測されていない。その原因として、レーザーパワーの不足と試料の厚さが厚いためという2点が考えられる。これらの原因により、円偏光を照射した際に磁気構造が変化しない可能性については、研究計画の段階から予測していた。そして、その際の対策として、レーザーの出力の向上、微細加工技術による試料の微細化、スキルミオン薄膜での実験、の三つを計画していた。そこで、今後は計画に従って、これらに取り組むことで、研究目標である超螺旋光を用いた、スキルミオン作成の達成に取り組む。以上の点から、おおむね計画通りに研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、研究目標である超螺旋光を用いた、スキルミオン作成の達成のため、次のように研究に取り組む。 上記の通り、2023年度は、当初予定した、円偏光を照射した際の磁気構造の変化やスキルミオン生成は観測されなかった。その原因として、レーザーの出力不足と試料の厚さが厚いためという2点が考えられるため、そこで、2024年度は、レーザーの出力の向上、微細加工技術による試料の微細化、スキルミオン薄膜での実験、の三つに取り組んで問題点を改善する。 レーザー出力の向上に関しては、レーザー光源を変更するとともに、光学系を改良することで、より強い光を集光できるようにする。バルク試料の微細化に関しては、収束イオンビームによる局所ミリングにより、バルク試料を最小で百ナノメートルまで微細化する。薄膜試料に関しては、MnBi薄膜または磁性金属/非磁性重金属の積層薄膜の使用を検討している。 これらの方策により、超螺旋光によるスキルミオンの生成に成功した場合は、スキルミオンが形成しやすい条件・物質の探索を進めるとともに、領域内の理論家とも協力しながら、スキルミオン生成の微視的機構についても明らかにしていく。
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