研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04587
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 教授 (70290905)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 量子化学 / 螺旋構造 / 統計力学 / 円二色性性 |
研究開始時の研究の概要 |
螺旋は、構成ユニットのキラリティーを増幅する構造であり、分子の協同性が顕在化する典型例である。本研究課題では多様な分子を光でキラル秩序化することを念頭に、統計力学理論や量子化学計算およびこれらのハイブリッド法を駆使し、動的螺旋高分子における螺旋構造反転へアプローチする新しい分子理論群を創出する。 具体的には 3状態モデルに基づく螺旋反転の新規統計力学理論を開発し、実際の実験結果の解析などを通じて協同性の本質に迫る。並行して分子性液体の統計力学理論や量子化学の高精度計算に基づきながら、実在系における螺旋構造の安定性の議論を可能とする枠組みの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度の活動で得られた成果の一部は以下の通りである。 (1)動的螺旋高分子をターゲットとして、螺旋構造反転を記述する分子理論の創出に取り組んだ。従来から高分子の螺旋構造形成に関してはZimm-Bragg モデルがよく知られており、タンパク質分子のヘリックス-コイル転移に関しても構造形成を調べる上で広く用いられてきた。ここでは従来の2状態転移用のイジング模型ではなく、「ほどけている」に「右巻き」「左巻き」を加えた3状態を考慮するポッツ模型へと拡張した理論の開発に取り組んだ。 (2)(1)は分子構造の粗視化を押し進めた「物理的」モデルだが、実在する系に対しては、原子レベルの情報を有する「化学的」視点が分子の特性を記述する上でしばしば本質的である。 本年度は、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)への適用を念頭に、電子状態に至るまでの詳細を考慮するアプローチについて検討した。異なる構造間のエネルギー差は極めて微妙であるため精密な理論が求められる一方で、螺旋構造を形成するためには相当数以上の原子を含む大きなサイズの系を対象とせざるを得ない。両者のトレードオフを考慮して密度汎関数強束縛法による計算を進め、同法を実行する上での利点および問題点を整理した。 (3)キラル分子を特定する最も広く用いられている測定法は円二色性(CD)スペクトルである。一般的な量子化学分野ではその計算方法が確立しているが、溶液中の分子に関して、とりわけ水素結合に代表される特異な溶質溶媒間相互作用が存在する系に対しては、未だに適切な方法は知られていない。そこで我々がこれまで開発を進めてきたRISM-SCF-SEDD法およびRISM-SCF-cSED法の枠組みで、スペクトルを計算する理論の開発に着手した。大型分子の計算を視野に入れ、(2)で述べた密度汎関数強束縛法あるいはさらに簡便な方法との融合を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げていた課題について、概ね順調に進んでいる。また関係者との議論・ご意見を通して、より領域の発展に貢献できるように推進している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度着手した研究項目を引き続き推進し、完成を目指す。特に(3)については幅広い展開が期待できるため、重点的かつ優先的に推進する。また光渦と物質の相互作用の理解を分子レベルで進めるために、領域内で共同研究を含めて実際に実験対象となっている分子系の計算を積極的に進める。
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