研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04591
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅原 康弘 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40206404)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 光誘起力顕微鏡 / 近接場光学顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、最近、物質表面に局在する光(近接場光)の強度分布を力として検出する新しい概念の光学顕微鏡(光誘起力顕微鏡)を用いて、フラーレン分子に局在する近接場光を原子分解能で測定することに世界で初めて成功した。本研究の目的は、物質表面のキラリティーを原子分解能で観察可能なキラル光誘起力顕微鏡を開発すると共に、キラル分子とその配列に伴う光誘起分極パターンを解析することにより、光の螺旋性と分子との相互作用を解明することにある。。分子の電子励起状態やキラリティーに関する情報を含む光誘起分極パターンを、原子スケールで画像化・解析することにより、光と物質との相互作用に関する理解が飛躍的に高まる。
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研究実績の概要 |
光の電界が物質に誘起する分極は、電子の励起状態の情報を含み、光と物質との相互作用において中心的役割を担う物理量である。しかし、これまで原子スケールでこれを直接観察した例はない。申請者らは、最近、物質表面に局在する光(近接場光)の強度分布を力として検出する新しい概念の光学顕微鏡(光誘起力顕微鏡)を用いて、フラーレン分子に局在する近接場光を原子分解能で測定することに世界で初めて成功した。本研究の目的は、物質表面のキラリティーを原子分解能で観察可能なキラル光誘起力顕微鏡を開発すると共に、キラル分子とその配列に伴う光誘起分極パターンを解析することにより、光の螺旋性と分子との相互作用を解明することにある。本年度は、以下のような成果が得られている。 1)キラリティーの最適観察条件の理論的検討 キラリティーの測定は、円二色性分光法に基づき、右回りの円偏光と左回りの円偏光の応答の差より行う。キラリティーを高感度に測定するために制限している因子(キラリティーの力への変換効率や変位検出計の雑音など)を理論的に検討し、最適観察条件を求めた。 2)円偏光を変調する光照射系の実現 キラリティーを高感度に測定するため、右回りの円偏光と左回りの円偏光が交互に入れ替わる光照射系を実現した。 3)キラリティーを検出可能な光誘起力顕微鏡の構築 キラリティーを測定するため、円偏光を変調した光で物質表面を照射し、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分をロックインアンプで検出できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
右回りの円偏光と左回りの円偏光が交互に入れ替わる光照射系を実現するとともに、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分をロックインアンプで検出できるようにした。このように、キラル光誘起力顕微鏡の準備ができ、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)キラリティーを測定するための試料準備 キラリティーを高感度に測定するため、探針による増強電場を用いる。試料として、絶縁性の塩化ナトリウム(NaCl)表面上の銅フタロシアニン分子やペンタセン分子を取り上げる。 2)キラリティーの最適観察条件の実験的検討 キラリティーによる力を最も高感度に測定できる条件を実験的に検討する。キラリティーによる力は、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分の探針・試料間距離依存性を数値積分することにより導出する。 3)近接場キラル光学顕微鏡の原子分解能観察の実証 銅フタロシアニン分子などのキラリティーの分布を原子スケールで観察できることを実証する。また、分子やその配列がどのように撮像されるかを理論的・実験的に検討し、画像化機構を解明する。
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