研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04594
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田村 守 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (30793583)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 光圧 / 光熱 / 光渦 / 熱流体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでにレーザー加工における溶融金属や、光異性化材料、さらには分散質を含む液体において、光渦や円偏光光源などの超螺旋光によるキラル秩序化や回転運動の誘起などが報告されてきた。このような現象を電磁気学と流体力学に基づき理論的に議論することで、より多様な物質・形状・環境・光源に対するキラルな運動誘起・秩序化の制御法を開拓可能である。本研究では広く流体を対象に、溶融金属や分散液などの超螺旋光によるキラルな駆動・秩序化を議論するための学理を構築し、その制御法や応用可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究は、溶融金属や粒子分散液などの超螺旋光によるキラルな駆動・秩序化を議論するための学理を構築し、その制御法や応用可能性を探求するものである。主に2つの研究項目を実施中であり、それぞれの初年度の研究実績の概要は下記の通りである。 [1]溶融を想定した金属において、円偏光光源の下での光圧によってキラルな構造形成の可能性を探索した。結果として、照射光の角運動量に依存したキラルな構造を光圧によって形成できる可能性を見出したものの、同時に表面張力がその変形を妨げることも確認しており、現実的なキラル構造の制御法を開拓する上で更なる工夫が必要となる。具体的には、超螺旋光の下での発熱現象に関してより詳細な議論を展開する必要があると考えている。円偏光光源などの下では、角運動量に対応したキラルな光学応答ならびに発熱現象が生じることを期待できる。次年度は光圧と光発熱の両要素に注目することで、更なるキラル構造の制御法の開拓を目指す。 [2]円偏光光源や光渦によって螺旋状の空間構造を持つ光場を構築できる。この光場の下で、金属ナノ粒子集団のキラル秩序構造を形成できる可能性を見出した。特に、照射光が持つ角運動量に依存して、形成される構造のキラリティを制御できることも見出しており、超螺旋光を用いたキラル秩序形成に向けて大きな進捗を得ている。次年度は異種粒子を含む場合や、照射光条件に対する依存性に関して詳細な探索を進める予定であり、特に異種物質間での階層的なキラル秩序形成の指導原理の開拓を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で実施中の2つの研究項目に関連し、「やや遅れている」を選択した理由は下記の通りである。 [1]第一の項目として、レーザー加工の数値計算手法に基づき、金属などを対象とした超螺旋光によるキラルな加工法の開拓を目指している。研究の第一歩として、まずは完全に溶融したことを想定した金属において、光圧による駆動を検証し、円偏光光源の下でキラル加工の可能性があることを見出している。一方で、表面張力などの影響が加工の妨げとなっており、現実的に加工が可能かどうか、金属の溶融や再凝固など熱的な効果と合わせて議論する必要がある。現時点で、そのための数値計算手法の整備に時間がかかり、進捗に遅れが生じている。 [2]第二の項目として、超螺旋光の下での分散粒子の操作によってキラル秩序の形成を目指している。超螺旋光によってナノ粒子集団のキラル秩序構造を形成できる可能性、特に照射光の角運動量に依存した構造形成などを確認しており、本項目の目的達成に向けた非常に大きな成果が得られた。 以上の通り、[2]に関しては順調に進捗しているが、[1]で遅れが生じているため、上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で実施中の2つの研究項目に関して、今後の研究の推進方策は下記の通りである。 [1]第一の項目に関し、任意の超螺旋光を用いた金属の発熱・溶融・再凝固などを評価するための数値計算手法を早急に整備する。光圧と光発熱の両要素の観点から既存の問題を解決しうる条件を探索し、キラル加工の可能性を解明する。 [2]第二の項目に関し、すでに得られているナノ粒子集団のキラル秩序形成の成果について、早急な論文化を目指す。また本項目において、異種粒子を含む環境での階層的な構造形成の可能性を期待でき、その詳細な検討を通じて新たなキラル秩序形成の解明を目指す。
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