研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04600
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
柚山 健一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 講師 (20786355)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 光渦 / 光ピンセット / フェニルアラニン / 結晶 / らせんバンドル |
研究開始時の研究の概要 |
芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンやその誘導体は、ファイバーやチューブ、それらが束になったバンドルなどの一次元的な集合体に自己組織化する。このような分子集合体形成を空間選択的に誘起する手法が、光圧を用いた光ピンセットである。気液界面での光ピンセットでは分子を局所的に濃縮することができ、集光位置において自己組織化が起こる。本課題では、ジフェニルアラニンとフェニルアラニン誘導体を対象に、光渦などの螺旋光の光圧を用いて集合体形成を行う。キラルな光の角運動量に起因する「捩じり力」を与えながら自己組織化を誘起し、バンドルの巻き方や巻き方向を任意に制御した超らせん状バンドルを創生する。
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研究実績の概要 |
光ピンセットは、ナノからマイクロメートルサイズの微粒子を捕捉する手法として広く用いられている。光ピンセットを気液界面で行うと、分子を局所的に濃縮することができ、集光位置において自己組織化が起こる。本課題では、ファイバーやチューブ、それらが束になったバンドルなどの一次元的な集合体に自己組織化する芳香族アミノ酸やその誘導体を光捕捉対象とし、光渦などのキラルな光の光圧を用いて分子集合体形成を行う。まず、光渦を用いた光ピンセット装置を構築した。光源には波長1064 nmの連続発振レーザーを用い、トポロジカルチャージ1~4の光渦とガウスビームを切り替えることができる光学系とした。構築した装置を利用し、直径500 nmの微粒子を捕捉した。光渦ではリング状に捕捉され公転運動することを確認した。続いて、Lフェニルアラニンの光捕捉を行った。気液界面で光捕捉を行うと集光点から結晶化が誘起される。光渦を用いて同様の実験を行ったところ、ガウスビームと同じように集光点から結晶化が誘起された。興味深いことに、光渦で作製した結晶の表面にはキラルレリーフが形成することを見出した。また、フェニルアラニン誘導体の光捕捉実験も行った。この分子は、自発的に球状集合体を形成した後、ファイバーやバンドルに変化する。自発的に形成した球状集合体に光渦を照射したところ、それらはリング状に捕捉され公転運動を示した。しかしながら、現時点での光捕捉条件・溶液条件では球状集合体がファイバー状に変化することはなかった。今後、光捕捉した球状集合体がファイバーに変化する条件を探す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光渦光ピンセットの装置を構築し、微粒子を捕捉・回転させることにより装置の性能評価を行った。また、光捕捉対象であるフェニルアラニン誘導体を合成し、その自己組織化特性についても調べた。球状集合体が形成し、それらが徐々にらせんバンドルに変化する様子を観察した。また、球状集合体は捕捉可能で公転運動を誘起できることを実験的に示した。さらに、光渦を用いてLフェニルアラニンの結晶化を誘起すると、集光点においてキラル表面レリーフが発現することを見出した。予想外の発見もあり、概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度見い出した光渦光ピンセットによるLフェニルアラニン結晶化におけるキラル表面レリーフの発現について詳細に調べ、その構造とメカニズムを明らかにする。また、らせんバンドルに自己組織化するフェニルアラニン誘導体を対象に光捕捉を行い、集光点からのバンドル形成と構造制御に取り組む。特に、球状集合体からバンドル形成への構造変化に注目し、球状集合体の光捕捉を中心に進める。
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