研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04604
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井村 考平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80342632)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 超螺旋光 / キラル光場 / ナノ物質 / プラズモン / Mie共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
光と物質の相互作用に新しい側面を構築することで,物質特性に新しい機能を創出することが可能です。本課題では,超螺旋光と呼ばれる特殊な光により誘起されるナノ物質近傍の特殊な光の場(光キラル場)を先端的な顕微鏡で可視化し,超螺旋光と物質の相互作用機構の理解を目指します。また,微視的な光応答がマクロな光応答に発展する過程を計測し,キラル秩序の化学を解明することで,物質科学にあたらたな展開をもたらすことを目指します。
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研究実績の概要 |
超螺旋光を金属や高屈折率ナノ物質に光照射すると,光電場と光磁場の両方が増強され,これにより新物性が実現する。本研究では,その微視的メカニズムを解明するため,ナノ物質近傍に誘起される光電磁場や光キラル応答を可視化する。また,超螺旋光によりナノ物質の光特性を制御し,微視的な応答をマクロな伝播制御に展開することを目的とする。これらを達成するために,キラル光場の可視化と超螺旋光によるナノ物質の光特性制御,また微視的な応答のマクロな伝播制御へ展開に取り組み,超螺旋光による光物性制御とその伝達制御の学理構築を目指す。本年度は,金ナノ物質近傍に誘起されるキラル光場の立体的可視化と超螺旋光を用いた光物性制御に取り組んだ。また,年度の後半では,近接場光によるキラル結晶化に取り組んだ。近接場光学顕微鏡を用いたキラル場の可視化では,金ナノプレートと金ナノレクタングルを研究対象とした。前者の試料では,入射偏光に依存した特徴的な空間構造が可視化されること,特定の固有モードでキラル場の増強が起こることが明らかとなった。また,3次元の可視化から近接場光の減衰とキラル場の減衰挙動が異なることが明らかとなった。一方,後者の試料の測定からは,固有モードにより特徴的なキラル光場が可視化されること,許容モードと禁制モードで減衰長が変化することが明らかとなった。光の軌道運動量をもつ螺旋光を用いて,金プレートの可視化を行った結果,その光の特性であるラジアルとアジマスの両方の特性を反映する励起像が得られることが明らかとなった。この結果は,電磁気学計算でも概ね再現されることが明らかとなった。キラル結晶化では,金属イオンの存在下において,金属ナノ物質に円偏光を照射し,光のキラリティーを反映した金属ナノ粒子の析出が可能かを検討した。また,析出後の試料について,非線形発光測定を行い,円偏光発光の偏りを評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,キラル場の可視化から,ナノ物質近傍における光キラル場を解明すること,この微視的な可視化から得られた知見をマクロな応答に繋げることを目的としている。本年度は,金属ナノ物質のキラル場の可視化に取り組み,これが計画どおり可視化できること,光近接場と光キラル場の伝播特性がことなることを明らかにしている。また,キラル場の3次元の可視化に取り組み,微視的な応答がどのようにマクロな応答に展開するかの知見も得られている。これらは,当初,研究の目的としたものである。また,以上に加えて,金属ナノ物質の近傍に微粒子を析出する研究にも取り組み,より強い光場を発生させるための原理の検証も進めてきている。さらに,通常の光学顕微鏡を用いた光キラル場の可視化にも着手し,その評価方法改善についての知見も得られている。以上の理由から,本研究は概ね計画どおりに進捗していると判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研究が概ね計画どおり進展していることから,2023年度は,当初の計画に沿って研究を進める計画である。具体的には,光キラル場とナノ物質に光励起される固有モードとの関係を詳細に研究し,光キラル場の発現メカニズムを解明する。また,これまで近接場光学顕微鏡の透過測定を用いた光キラル場の可視化に取り組んできたが,これを発光測定に拡張する計画である。これにより,高感度化が実現されると期待される。また,色素分子と組み合わせた研究に展開することで,光キラル場と物質の相互作用について,さらなる知見が得られることが期待される。通常の光学顕微鏡を利用した光キラル場の可視化にも取り組む。これにより,計測時間の大幅な短縮が実現し,多様な試料におけるナノからマイクロスケールの光キラル場の研究を可能にする計画である。研究対象として,金属ナノ物質やSi微粒子を用いて,軌道角運動量をもつ超螺旋光と物質の相互作用,その光学応答の制御に取り組む計画である。以上により,本研究の目的達成を目指す。
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