研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
23H04609
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
中村 浩章 核融合科学研究所, 研究部, 教授 (30311210)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 光渦 / 分子動力学法 / 螺旋構造 / プラズマ波動相互作用 / アミノ酸前駆体 / 分子動力学 |
研究開始時の研究の概要 |
光渦の持つ角運動量が物質に転写されることで、物質に螺旋性が現れる。例えば、固体への超螺旋光照射による螺旋ナノ針構造の形成現象では、まず軽い電子が超螺旋光から運動量を獲得する。この電子と結晶格子との衝突により格子が揺さぶられ、やがて格子間結合を超えると結晶が崩れ溶融する。この際、原子核は電子よりはるかに重いため、螺旋光を電子応答を通して運動し、巨視的形状が決まっていく。この巨視形状の予測・制御が「らせんの工学」の実現のかなめと考える。このらせんの工学のシミュレーションツールを開発を行う。具体的な課題として、プラズマの加熱・宇宙でのらせん構造を持つアミノ酸前駆体(がらくた分子)の生成を取り上げる。
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研究実績の概要 |
「螺旋光の作り出す物質の巨視的な螺旋特性を、計算機上で『螺旋光と物質の素過程』からの積み上げで導きだせるか?」という学術的な問いへの挑戦を目指し、本研究では、プラズマ理論・シミュレーション技法の螺旋光への拡張により、電子・イオンの螺旋光の吸収素過程と巨視的螺旋性の発現を系統的に調べ上げる。これらの手法を用いて、宇宙プラズマへの螺旋光照射による螺旋特性を持つがらくた分子の生成を目指し、以下の3つの課題に取り組んだ。 課題1:核融合磁化プラズマと光渦の相互作用のシミュレーション:通常の平面波がカットオフ条件により伝搬できない磁化された弱電離プラズマ中をミリ波渦が伝搬することが指摘されていた。この指摘では、ミリ波の光渦が従来のガウス波の伝播可能領域だけでなくプラズマ中のカットオフ領域にも波力を入射できる可能性を示しているため、従来のコルゲート導波管HE11モードミリ波によるプラズマ加熱よりも効率的なプラズマ加熱につながる新たな加熱方法を示唆している。そこで、本研究グループは、コルゲート導波管ハイブリッドモードのミリ波渦の伝搬を有限差分時間領域(FDTD)法で評価した。 課題2:生命の起源生成シナリオ「がらくた分子仮説」の要である「プラズマ・低分子雲から、がらくた分子生成」のシミュレーション:宇宙空間でのガラクタ分子の生成の候補として、星間ダストの氷マントルに宇宙線が照射されると、分子雲中でアミノ酸前駆体が生成されることが報告されている。そこで、これら一連の実験では解明できないアミノ酸の生成経路を分子動力学法により調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者との交流が順調に進み、光渦プラズマ相互作用のFDTDシミュレーション・アミノ酸合成の分子動力学シミュレーション・さらに導波管中の電子のサイクロトロン運動からの電磁場放射の理論計算を、ほぼ予定通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
アミノ酸前駆体の分子動力学シミュレーションでは、古典力学的な取り扱いだけでは、出来上がった分子の安定性を評価できないため、量子化学計算も行っていく必要がある。さらに、冷却機構を考慮する必要があるため、例えば氷ダストの融解についてもシミュレートを行いたい。プラズマ光渦相互作用では、今年度は真空とプラズマの教会をステップ関数型で近似しているが、徐々にプラズマ密度を増やすような現実に近い系へと進化させたい。
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