研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
23H04613
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荻原 直希 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70848267)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | ポリオキソメタレート / 多孔性金属錯体 / イオン吸着 / Csイオン吸着 / イオン伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
集積型錯体結晶である多孔性金属錯体(MOF)中に分子性の金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレート(POM)を内包した内圏型超セラミックスであるPOM@MOFを基盤とした機能物性科学を展開する。POM@MOFではPOMを液相に近い状態で固体化できるため、POMが有する酸化還元特性を最大限に活用できる。さらにMOF細孔の精密設計を行うことで、電子移動とカップリングしたイオンの吸着・輸送の高機能発現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は集積型錯体結晶である多孔性金属錯体(metal-organic framework,MOF)中に分子性の金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレート(POM)を内包した内圏型超セラミックスであるPOM@MOFを基盤とした機能物性科学を展開することを目的とする。本年度はPOM@MOFのCs+イオン吸着材料としての応用を検討した。 溶液中からのCs+イオン除去は、水や有機溶媒の処理において重要な課題である。これまで活性炭やゼオライト等の多孔性材料を用いたCs+吸着が検討されてきたが、その吸着性能は頭打ちになりつつあり、新たな吸着材料の開発が求められている。 そこで本研究では、Cs+吸着材料としてPOM@MOFに着目した。POM@MOFを構成するMOFとしては、高い構造安定性を有するZn[2-methylimidazolate]2 (ZIF-8)、POMとしては酸化還元活性を有するKeggin型POM [PMo12O40]3- (PMo12)を選定した。PMo12@ZIF-8複合体の合成はPMo12の存在下でZIF-8の前駆体を液相中で反応させることで行った。メタノール溶液中におけるCs+吸着特性を評価したところ、PMo12@ZIF-8はZIF-8単体を凌駕する吸着特性を示した。さらにCs+吸着条件下で還元剤となるアスコルビン酸を添加すると、Cs+吸着量の増加が観測された。吸着機構解明のために、還元的にCs+吸着させたPMo12@ZIF-8のXPS測定を行ったところ、PMo12の6価のMoの一部が5価のMoに還元され、PMo12の負電荷が増大することが観測された。これらの結果より、PMo12の還元により増加した負電荷の電荷補償として、Cs+がPMo12@ZIF-8の構造中に取り込まれることが、吸着機能の向上の鍵になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、本年度はPOM@MOFの合成および構造解析を行い、POM@MOFの機能性の本格的な評価は次年度に行う予定であった。しかしながら、実際のところは本年度の間に、POM@MOFを用いたCs+イオン吸着特性の評価も実施することができ、また吸着機構解明も行うことができた。 そのため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はPOM@MOFを用いた更なる機能発現を目指して行く。具体的には、無機カチオンであるCs+イオンの吸着だけでなく、メチレンブルー等の有機カチオンの吸着への応用を進める。またPOMの還元を駆動力としたイオン吸着に加えて、超セラミックス中のPOMの酸化還元を利用したH+伝導性の制御等も試みる。
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