研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
23H04617
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福井 智也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40808838)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 界面制御 / 有機-無機ハイブリッド / ブロック超セラミックス / ペロブスカイト / 結晶 / シード結晶化 / ハロゲン化銅 |
研究開始時の研究の概要 |
異種物質がシームレスにヘテロ接合して形成されるブロック構造体においては、単一成分からなる物質では見られない機能の発現が期待される。本研究では、シード結晶化によるブロック共結晶構築のコンセプトを内圏型超セラミックスである有機-無機ハイブリッドハロゲン化金属へと拡張し、異種ハイブリッドハロゲン化金属がヘテロ接合したブロック超セラミックスの精密構築に挑む。具体的には、ブロック超セラミックスの構築を通じ得られた知見を基盤に、面選択的なシード結晶化による異方的ブロック超セラミックスの創製へ発展させるとともに、ヘテロ接合界面における局所構造を解明し、ブロック間の相乗により発現する機能・物性を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、有機カチオンとハロゲン化金属の複合化により構築される内圏型超セラミックスである有機-無機ハイブリッドハロゲン化金 属系をターゲットに、外圏型超セラミックスのコンセプトを融合することで、異種有機-無機ハイブリッドハロゲン化金属がヘテロ接合したブロック超セラミックス(検討課題1)や有機カチオンの分子設計に基づく結晶面選択的なシード結晶化による異方的ブロック超セラミックス(研究課題2)の創製を通じ、新たな物質開発の方法論を確立することである。さらに、ブロック超セラミックスのヘテロ接合界面の局所構造解析やブロック同士のヘテロ接合により発現する物性・機能の開拓(研究課題3)を通じ、新しい機能性マテリアルへと昇華させる。 2023年度は検討課題1を精力的に進めた。ペロブスカイト骨格としては、有機カチオンとの複合化により2次元構造を形成することが知られる鉛ハライドを選択した。はじめに、有機カチオンとして、ベンジルアンモニウムを用いた場合、得られるペロブスカイト結晶の安定性が非常に低く、シード結晶化を利用したブロック構造体の合成が原理的にできないことが明らかになった。そこで、大きなπ共役骨格を持つ有機カチオンを新たに合成し、ハイブリッドペロブスカイトを合成した。興味深いことに、このハイブリッドペロブスカイトは、強酸溶液中でも分解せず安定に取り扱うことができた。得られたハイブリッドペロブスカイトをシードとして、異種ハロゲンを含むハイブリッドペロブスカイトを作製したところ、シード界面からの結晶化が進行し、目的とするブロックハイブリッドペロブスカイトを合成することができた。現在、ブロックハイブリッドペロブスカイトの電子、光電子的性質について評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は検討課題1を精力的に進めた。ペロブスカイト骨格としては、有機カチオンとの複合化により2次元構造を形成することが知られる鉛ハライドを選択した。はじめに、有機カチオンとして、ベンジルアンモニウムを用いた場合、得られるペロブスカイト結晶の安定性が非常に低く、シード結晶化を利用したブロック構造体の合成が原理的にできないことが明らかになった。そこで、大きなπ共役骨格を持つ有機カチオンを新たに合成し、ハイブリッドペロブスカイトを合成した。興味深いことに、このハイブリッドペロブスカイトは、強酸溶液中でも分解せず安定に取り扱うことができた。得られたハイブリッドペロブスカイトをシードとして、異種ハロゲンを含むハイブリッドペロブスカイトを作製したところ、シード界面からの結晶化が進行し、目的とするブロックハイブリッドペロブスカイトを合成することができた。SEM-EDXを用い、ブロックハイブリッドペロブスカイトが明確なヘテロ界面をもつことを明らかにしている。現在、ブロックハイブリッドペロブスカイトの電子、光電子的性質について評価を進めている。 上記に加え、本領域に参画後に開始した共同研究を論文として2報報告している。ペロブスカイト表面に多点吸着可能なトリプチセントリカチオン分子を合成し、それをペロブスカイト太陽電池の表面パッシベーション剤として利用することで、太陽電池の長期安定性が向上することを見いだした。本成果は、A03班石割先生との共同研究成果として、Small Structures誌に報告した。C01班山本先生が合成した規則的な欠損をもつ結晶性ハイブリッドペロブスカイトの光電子物性の評価を担当し、その成果をACS Materials Letters誌に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまでに合成したブロックハイブリッドペロブスカイトの評価を進めるとともに、検討課題2、3を進める。 検討課題2については、2023年度に合成した有機カチオンと類似の分子構造をもつ有機カチオンを新たに合成し、それを用いたハイブリッドペロブスカイトの合成に取り組む。得られたハイブリッドペロブスカイトの結晶学パラメータを詳細に評価し、これまでに得られているハイブリッドペロブスカイトとどの結晶面で大きなミスマッチを持つか明らかにする。以上を踏まえ、シード結晶化によるブロックハイブリッドペロブスカイトの合成を検討し、結晶成長における面選択性と結晶格子ミスマッチについて明らかにする。得られたブロックハイブリッドペロブスカイトについては、単結晶X線構造解析やSEM-EDXによる構造のキャラクタリゼーションに加え、発光特性に着目した機能の評価を進める。 検討課題3については、これまでに得られているブロックハイブリッドペロブスカイトを対象に、ブロック間で光誘起エネルギー移動が進行するのかどうかについて、蛍光寿命測定や量子収率の評価などを通じ、多角的に評価する。また、これまでのところ、マクロスケールの結晶を対象に検討を進めているが、上記物性におけるブロックハイブリッドペロブスカイトのサイズ効果について詳細に検討を進める。 以上の検討に加え、これまでに進行している共同研究をまとめ上げ、それぞれ論文化を念頭に置いた検討を進める。
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