研究領域 | CO環境の生命惑星化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04645
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 辰哉 東北大学, 理学研究科, 特任研究員(日本学術振興会特別研究員PD) (10938393)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 同位体分別 / 火星大気 / 大気散逸 / 大気光化学 / 有機物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では独自の大気モデルと最新の火星周回機大気観測の組み合わせから、光解離が CO2 や CO 等の炭素化合物の同位体組成に与える影響を明らかにする。その最新の炭素同位体組成推定に基づき、大気同位体組成と整合的な過去 ~40 億年にわたる火星大気進化史を推定する。さらに、 初期火星大気における各種有機物の光化学的生成率と同位体組成を推定し、火星地表面で発見された有機物の炭素同位体組成との整合性を定量評価することで、有機物生成場としての初期大気の役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
光化学反応に伴う同位体分別を考慮した一次元大気光化学モデルの拡張を進めた。新たにホルムアルデヒドをはじめとした有機分子の生成を考慮し、初期火星大気における有機分子の生成率と炭素同位体組成を推定した。その結果、大気中で H2 または CO に富む場合には初期火星大気中で有機分子の生成が効率的であること、CO と同じく有機分子も CO2 と比較し 13C に枯渇した炭素同位体組成を持つことが明らかとなった。モデル計算から推定された炭素同位体組成は火星ローバー Curiosity が発見した火星堆積物中有機物の 13C に枯渇した炭素同位体組成を合理的に説明するものであり、火星表層有機物の起源が大気由来であることを同位体組成の観点から新たに見出した。 炭素同位体分別過程に加えて新たに酸素同位体分別過程を大気光化学モデルに組み込み、火星大気における酸素を含む各化学種の酸素同位体組成高度分布を推定した。その結果、炭素同位体組成と同様に酸素同位体組成も光化学反応の影響を強く受け、CO2 と比較し光化学生成物の大部分が 18O に枯渇することが明らかとなった。この同位体分別過程は大気散逸時の同位体分別度合いにも影響することも新たに見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在火星大気における一次元大気光化学モデルを大幅に拡張し、初期火星大気における有機物の生成率と炭素同位体組成を推定することに成功した。モデル計算の結果、初期火星大気において有機分子生成が効率的に進んでいた可能性があること、その炭素同位体組成が火星ローバーが検出した有機物同位体組成と整合的であることを見出し、その初期結果をまとめた学術論文を出版済である。炭素同位体分別過程のみならず酸素同位体分別過程も包括的に大気光化学モデルに組み込み、火星大気における酸素同位体分別組成高度分布推定の初期結果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
・初期火星大気を想定し幅広い大気質量と組成において有機分子の生成率と炭素同位体組成を推定し、火星表層有機物同位体組成と整合的な初期大気組成及び表層環境の制約を進める。 ・現在火星大気において光化学反応に伴う同位体分別過程が宇宙空間に流出するイオンの同位体組成に与える影響を明らかにし、将来の火星探査機 MMX による流出イオン観測の理論予測を行う。
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