研究領域 | CO環境の生命惑星化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04652
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
瀬戸 繭美 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (10512717)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 酸化還元反応 / 代謝反応 / 微生物生態 / ギブスエネルギー / 数理モデリング / 酸化還元 / 微生物生態学 / 地球微生物学 / 化学熱力学 / 酸化還元化学 / 群集生態学 / 熱力学 / 個体群動態モデル / 化学合成微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
生命や生態系の法則を説明する理論は、地球の生命や生態系の観察に基づき構築・発展してきた。現在の地球表層環境は、光合成生物の存在により、酸素と有機物の豊富な「特殊な」環境である。しかしながら、惑星の化学状態は多様であり、こうした多様な環境における生命や生態系の進化や発展を予測・説明するための理論体系が必要である。本研究では一酸化炭素COから有機分子が生成する惑星環境 (CO world) を対象とし、これまでの生命・生態系の法則の拡張を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、酸化還元反応系と生命系の共発展の一般法則を導くこと(テーマ(i))、およびCOから有機分子が生成する惑星環境(CO world)における微生物群集の炭素フローへの寄与を定量評価すること(テーマ(ii))を目指す。 テーマ(i)では、Eco-Geochemicalモデル(Eco-Redoxモデルに改名)の発展研究として、酸化還元反応系と微生物群集の進化に関する理論研究を実施した。Eco-Redoxモデルの先行研究では、微生物生態系とエネルギー利用の法則について数値シミュレーションに基づく理解を試みた。その結果、エネルギー供給が少ない生態系において、微生物の相利的相互作用がエネルギー利用効率を向上させることが示され、この成果をEcology Letters誌に発表した。この成果で開発した計算アルゴリズムを用い、11の窒素化学種と988の反応を対象とした反応ネットワーク研究を展開した。この研究では、無機反応の熱力学的側面が微生物の代謝過程の進化と群集レベルのネットワーク形成に与える影響について理論的解釈を試みた。本研究の成果を2024年5月中に投稿予定である。また、本モデルに進化シミュレーションを追加することにより、微生物代謝の進化が群集の安定性ならびに惑星の物質循環過程に及ぼす影響力を評価する数値シミュレーション実験を進行中である。 テーマ(ii)では、Watanabe et al. (2023)のモデルに登場する10の代謝反応を担う微生物機能群のパラメータ収集ならびに個体群動態のモデル化を完了した。共同研究者から物理化学パラメータを受け取り次第、数値計算を実施し、微生物群集ダイナミクスが古原生代の炭素フローに及ぼす影響を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、酸化還元反応系と生命系の共発展の一般法則を導くこと(テーマ(i))、およびCOから有機分子が生成する惑星環境(CO world)における微生物群集の個体群動態の寄与を定量評価すること(テーマ(ii))を目指している。現在までの進捗はおおむね順調に進んでいると評価する。 テーマ(i)では、Eco-Geochemicalモデル(現在はEco-Redoxモデル)の先行研究で開発したアルゴリズムを応用し、11の窒素化学種と988の反応を対象とした反応ネットワークについて無機反応の熱力学的側面が微生物の代謝過程の進化と群集レベルの代謝ネットワークに与える影響を検証した。この研究成果は2024年5月に投稿予定である。もう一つの発展研究として、進化シミュレーションの導入により、微生物代謝の進化と群集の安定性、ギブスエネルギーとの関係を検証している。 テーマ(ii)では、Watanabe et al. (2023)のモデルに基づき、10の代謝反応を担う微生物機能群のパラメータ収集ならびに個体群動態のモデル化を完了した。共同研究者から物理化学パラメータを受け取り次第、それらを用いて数値シミュレーションを行い、微生物群集ダイナミクスが古原生代の炭素フローに与える影響を検証する予定である。 現状、当初予期していなかった問題は発生しておらず、計画通りに研究の半分までが進展している。そのため、2024度内に全ての研究計画を完了する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
微生物代謝進化が物質循環過程に及ぼす影響の評価: Eco-Redoxモデルに微生物代謝の進化シミュレーションを導入したモデルのシミュレーションを通じ、微生物代謝が群集のエネルギー利用と生態系の安定性に及ぼす影響を理解することを目指す。特に、進化の確率性が惑星の酸化還元状態に与える影響を解析し、生命進化が惑星の物質循環過程に及ぼしうる影響力を評価する。
古原生代の炭素フローにおける微生物群集ダイナミクスの影響解明: Watanabe et al. (2023)のモデルに10の代謝反応を担う微生物機能群の個体群動態を導入し、微生物が酸化還元化学種をめぐって生じる競争や協力によって発生するダイナミクスが古原生代の炭素フローに与える影響を数値シミュレーションにより検証する。
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