研究領域 | CO環境の生命惑星化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04653
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
佐川 英夫 京都産業大学, 理学部, 教授 (40526034)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | CO同位体 / 金星大気 / 高分散分光 / 地上観測 / 同位体比分別 / 近赤外線 / 高分散分光観測 / O2大気光 / CO / 同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
金星大気の主成分である二酸化炭素(CO2)分子は紫外線により一酸化炭素(CO)と酸素に光解離するが、分解したCOをCO2に復元する反応経路は未だに不明である。「CO2大気安定性問題」として広く知られるこの問題は、金星や火星のCO2大気化学の問題にとどまらず、地球型惑星の大気環境の進化やそこでの生命圏の形成過程を理解する上で本質的に重要な問題となっている。 本研究では、近赤外線波長域およびサブミリ波領域での地上観測を用いて、金星大気中のCOおよびその同位体を高精度で観測し、金星大気におけるCO2・CO大気化学の実態を観測的に制約する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、地上望遠鏡を用いた高分散分光観測により、金星大気中のCO同位体比を導出し、金星大気化学に対する新たな観測的制約を得ることを目標としている。 鍵となる地上観測の一つが、チリのマゼラン望遠鏡に設置された近赤外線高分散分光装置WINEREDを用いた金星観測であるが、金星の観測は低高度の観測に制約されてしまう。そのため、観測時の地球大気のエアマスが大きくなり、大気分散による観測データの劣化が懸念されていた。しかし、2023年度に金星観測を実施した際には、大気分散の影響による観測データの劣化は当初想定していたほどの致命的なレベルではなく、既存の望遠鏡設備を利用するだけでも科学的に十分有用な観測が実現されることが判明した。そのため、新たな大気分散補正装置を導入する必要がなくなり、現在、試験観測で取得されたデータを解析中である。 同時に、ハワイのNASA赤外望遠鏡IRTFを用いて取得していた波長2ミクロン帯の高分散分光データの解析も進めており、13COおよびC18Oのラインが十分なSN比で検出されている。 他方、上層大気中のCOをターゲットとしたサブミリ波帯による観測計画であるが、いくつかの事情から望遠鏡利用時間の購入計画を見直す必要が生じた。当初の研究計画で想定していた海外のサブミリ波望遠鏡の利用に拘らず、国内のミリ波望遠鏡を利用することを新たに検討を進めている。その際、上層大気の気温分布を精度良く把握できるかが、上層大気中のCO同位体比の導出精度に大きく影響することが分かり、上層大気の気温分布を観測的に制約する方法を調査した。その結果、WINEREDによる波長1.27ミクロン帯の近赤外線高分散分光観測から、上層大気のO2大気光のスペクトルを取得し、回転温度を高精度で導出できることが明らかとなった。現在、WINEREDによる雲頂CO2観測と上層大気O2大気光観測を効率良く両立させるための観測運用方法の最適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WINERED観測時の地球大気分散の影響が、当初懸念していたほどの致命的な問題は引き起こさないことが確認でき、大気分散補正装置の新規導入に必要な研究コストを省略することが可能となった。 一方で、サブミリ波帯の観測計画を再検討する必要が生じており、その対応策として、WINEREDの観測運用モードを効率良く切り替える機構を開発する必要が生じている。ただし、この計画見直しを行ったとしても、当初の研究計画で目的としていた科学目標であるCO同位体比および上層大気の気温分布の導出は問題無く、むしろ、より効果的に達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に取得したWINEREDおよびIRTF/iSHELLの近赤外線高分散分光スペクトルの解析を進める。データ解析に必要な金星大気中の放射伝達計算モデルの準備は概ね終了しており、解析結果を順次、学会発表および投稿論文としてまとめていく。 WINEREDのYバンド・Jバンドの運用モードの自動切り替え機構を実装し、Yバンド帯によるCO2観測とJバンド帯によるO2大気光観測を同一観測日内でも両立的に観測できるようにする。2024年度後半の金星観測好機に、WINEREDによる近赤外線観測とミリ波帯の上層大気観測を同時実施できるよう、観測提案などを準備していく。
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