研究領域 | 力が制御する生体秩序の創発 |
研究課題/領域番号 |
23H04696
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 悠一朗 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (90782152)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 個体再編成 / 原始後生動物 / 自己組織化 / 再生 / クラゲ |
研究開始時の研究の概要 |
多細胞動物の再生過程では、発生過程と同様にメカノ刺激が重要な役割を果たすことが想定されるが、生体での再生、特に個体レベルの再生や再編成を実現する力学-化学クロストークの実体や自己組織化メカニズムはほとんど明らかとなっていない。本研究では、原始後生動物であるエダアシクラゲを使って、個体再編成におけるパターン形成を実現するための幹細胞ダイナミクスとそれを制御する遺伝子発現とメカノ刺激のクロストーク解明を目指す。研究成果は、複雑に進化した高等動物にも共通する自己組織化の普遍的原理の理解や未知の再生原理への示唆を与えることが期待される。
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研究実績の概要 |
多細胞動物の再生過程では、発生過程と同様にメカノ刺激が重要な役割を果たすことが想定されるが、生体での再生、特に個体レベルの再生や再編成を実現する力学-化学クロストークの実体や自己組織化メカニズムはほとんど明らかとなっていない。本研究は、原始後生動物であるエダアシクラゲを使って、個体再編成におけるパターン形成を実現するための幹細胞ダイナミクスとそれを制御する遺伝子発現とメカノ刺激のクロストーク解明を目指すものである。 これまでに、メデューサ芽およびポリプ断片がシスト様のスフェロイドを形成してストロンを伸長してポリプを再形成することを見出している。メデューサ芽からのスフェロイド形成時には幹細胞が均一に分布していたことから、ポリプからのスフェロイド形成においても同様の振る舞いが起こりうるかを検証した。また、シスト形成に伴う遺伝子発現変化を同定するためにサンプルを回収した。さらに、アクチン細胞骨格や細胞増殖の阻害によって、それぞれシスト化やストロン化を抑制できることを見出した。 本研究に関連して、触手再生を器官再生のモデルとして幹細胞の動態を解析することで、損傷特異的に出現する幹細胞の存在を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、申請者が原始後生動物である刺胞動物のエダアシクラゲを使って見出した「個体再編成における自己組織化」に注目して、パターン形成における幹細胞ダイナミクスとそれを制御する遺伝子発現とメカノ刺激のクロストークを解明することを目指している。 本年度は、ポリプ断片から誘導されるシスト化において、幹細胞の分布をFISH法で観察した。その結果、ポリプ断片にはごく少数であった幹細胞数がシスト化に伴い顕著に増加することが分かった。この結果は、触手再生の系で見出した損傷特異的な幹細胞の出現(Fujita et al., PLOS Biol 2023)と同様の仕組みが期待される。損傷特異的幹細胞の同定は刺胞動物、特にクラゲの系で初めて見出された成果としてインパクトがあると考えられる。 メデューサ芽およびポリプ断片からシスト化が誘導されることから、両者のシスト前とシスト化したサンプルを回収してRNAとして精製した。さらに、拍動性収縮に伴うメカノ刺激の関与を検証する最初のステップとて、ミオシン阻害剤を投与したところ、シスト形成の異常や拍動の様式の違いなどがプレリミナリーな結果として見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、シスト形成時に出現する/均一に分布する幹細胞がストロン化を含む自己組織化にどのように関与するのか、マクロな形態形成と拍動性収縮の関与に着目した解析を進める予定である。幹細胞を除去した個体や拍動性収縮を阻害した場合の両者の関係性について明らかにする。またRNA-seqから明らかになると期待されるシグナル経路の関与などを薬剤やRNAiによって検証する予定である。さらにデバイスの利用によって、局所的な細胞骨格/シグナル経路の操作などを導入することでグローバルなメカノ刺激の関与を検証する予定である。
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