研究領域 | 力が制御する生体秩序の創発 |
研究課題/領域番号 |
23H04698
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉村 薫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50466033)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 力学 / ベイズ統計 / 形態形成 / 上皮 / ベイズ推定 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は最近、細胞の形態が可視化された画像から細胞の力学パラメータを高精度かつ簡易に推定する手法を開発した (Ogita et al. 2022)。本研究では、力学パラメータ推定法をベイズ推定で再定式化することで、遺伝子型や発生ステージなどの集団としての特性と個々のサンプルの特性をシームレスに統合した推定や適用可能なモデル関数の拡張を実現する。新しい手法を研究代表者もしくは領域内他研究者が取得した画像データに適用し、細胞の力学パラメータを数値指標として提供する。さらに、力学パラメータと細胞の動態や極性との相関にもとづいて、理論・実験の両面から、力学パラメータの機能的意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
生体秩序形成の力学制御を解き明かすには、細胞集団の力学モデルのパラメータを実験データから精度高く評価することが必須である。しかし 、既存のパラメータ評価手法は細胞の多角形分布などの要約統計量を用いた間接的な比較に留まっており、直接的な評価手法の開発が待たれていた。研究代表者は最近、実験データに基づいて力学モデルの数式を設計し、データが持つ情報から直接、パラメータを高速かつ高精度に推定する手法を報告した (Ogita et al. 2022)。本研究では、力学パラメータ推定法をベイズ推定で再定式化することで、より多くの情報を反映した統合的な推定を実現することを目指す。
2023年度は、力学パラメータ推定法の単層ベイズモデルと階層ベイズモデルを実装し、人工データを用いたテストを実施して、パラメータ推定およびモデル選択の正確性を確認した。開発した手法を用いて、オリジナルの手法では多重共線性が原因で実現できなかった細胞皮質弾性項を含んだモデル選択を行ったところ、当該分野の既存研究で現象論的に足されていた細胞皮質弾性項が細胞の力学(力-形態相関)にほぼ寄与しないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像データから力学パラメータをベイズ推定する手法の実装と検証、ショウジョウバエ上皮組織への応用についてまとめた論文を投稿するなど、当初の予定通りに進行している (Yan et al. bioRxiv, 2024)。
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今後の研究の推進方策 |
1. 2023年度に得られた研究成果の論文発表 画像データから力学パラメータをベイズ推定する手法の実装と検証、ショウジョウバエ上皮組織への応用についてまとめた論文を出版する (Yan et al. bioRxiv, 2024)。 2. 力学パラメータと細胞動態・極性の相関の解析 力学パラメータ推定法を、野生型もしくは変異型のショウジョウバエの上皮組織に適用し、力学パラメータの推定値と細胞の動態や極性を比較する。 3. 力学パラメータの機能的意義の解明 力学パラメータと細胞動態・極性の間に興味深い相関が見出されれば、より詳細な解析を進めて、力学パラメータの機能的意義を明らかにする 。例えば、力学パラメータの推定値をCell Vertex Modelに取り込んだ数値計算を実施し、細胞の動態や組織の形状に与える影響を解析する。
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