研究領域 | 植物の挑戦的な繁殖適応戦略を駆動する両性花とその可塑性を支えるゲノム動態 |
研究課題/領域番号 |
23H04732
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井川 智子 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (00360488)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 重複受精 / 配偶子融合 / タンパク質相互作用 / 進化 / 卵細胞 / 精細胞 / 機能領域 / 分化操作 / 被子植物 / 卵細胞受精 / 細胞膜融合 |
研究開始時の研究の概要 |
被子植物の重複受精は進化の過程で獲得された有性生殖様式である。我々はこれまでに,被子植物(シロイヌナズナ)の精細胞膜タンパク質DMP9を受精因子として同定している。精細胞DMP9は卵細胞受精においてのみ要求されることを明らかにした。DMP9に類似するオーソログタンパク質は緑色藻類から存在しているが,種内でのパラログ数は被子植物と比較して少ない。また,推定立体構造が被子植物とは異なる領域もあり,卵細胞受精制御において機能がどのように保存されてきたか,についての生物学的な知見はまだない。本研究ではDMP9の機能保存性を解析し,重複受精の確立に至る分子メカニズムを進化的な側面から解明する。
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研究実績の概要 |
緑色藻類から裸子植物までは精子と卵の受精が行われるのに対して,被子植物では精細胞と卵細胞,さらには精細胞と中央細胞間での重複受精が行われる。シロイヌナズナの精細胞膜タンパク質であるDMP9受精因子は,卵細胞受精においてのみ要求される。卵細胞受精制御において機能がどのように保存されてきたか,についての生物学的な知見はまだない。本研究ではDMP9の機能保存性を解析し,重複受精の確立に至る分子メカニズムを進化的な側面から解明することを目的に,R5年度は以下の解析を行った。 まず,様々なDMP9のデリーションシリーズをdmp9変異体に導入した組換え体系統を作出し,種子発達表現型の評価による相補解析を行った。DMPタンパク質のN末端側約60残基および第2ループ中のアブラナ科にのみ保存されるアミノ酸配列部位をそれぞれデリーションしたDMP9バリアントはdmp9の変異表現型を相補せず,これらの領域が受精に重要であることを示唆した。さらに,精細胞中でDMP9と相互作用するタンパク質を捕捉するために, DMP-GFP株の花粉を回収して免疫沈降実験の解析材料を整備した。 GCS1の相互作用因子として当研究室で同定していたGAH1について解析を進めた結果,GAH1はyeast two-hybridアッセイでGCS1との相互作用が示唆され,また,中央細胞や助細胞の原形質膜局在が確認された。さらに,精細胞と栄養細胞でも遺伝子発現がおき,特に栄養細胞で発現して精細胞の内部形質膜に局在する挙動を示した。 そのほか,将来的に多様な植物種での受精因子機能の保存性を検証するために,モデル植物種以外でのバイオテクノロジー技術開発を行い,組換え細胞を自発的に分化させる系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DMP9の機能解析および相互作用因子捕捉解析の準備は予定通りに進行した。免疫沈降とプロテオーム解析による同定を予定しているが,それらを可能とする予備的なタンパク質抽出や免疫沈降条件の検討を行った。 また,GCS1の推定相互作用因子であるGAH1については,先行研究で同定されたタンパク質に加え,シロイヌナズナゲノム上のオーソログタンパク質についても詳細な発現解析と局在解析を行い,生殖細胞の膜上に局在することを明らかにした。それぞれのゲノム編集も行った結果,表現型の変化は見出されなかったが,そのほかの推定オーソログを標的とした機能解析を展開させる進捗に繋がった。 また,先行研究で別に同定された数個のタンパク質種について局在解析を行った結果,2種のタンパク質が配偶子膜に局在を示唆し,機能解析への展開に繋がった。 解析技術開発として行っていた細胞分化制御法については国際科学雑誌へ投稿した。R6年度現在においてアクセプトされ,昨年度の評価が学術論文として一つの知見をもたらすに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
DMP9の機能解析については,種特異的と見出されているアミノ酸領域について詳細な機能解析を進める。また,R6年度中に免疫沈降とプロテオーム解析を行い,相互作用因子の捕捉を行う。 GCS1相互作用因子についても,R5年度に生化学的相互作用解析によって示唆された段階にあるため,これらの再現性を検証する。特にGCS1に関しては従来より体細胞での発現が難しいため,これを回避するin plantaのタンパク質発現技術の開発も行う。先行研究によって相互作用因子として同定され,配偶子で局在するタンパク質種については機能解析データを蓄積し,GCS1との相互作用の再現性データを合わせることで,学術論文として査読付き国際科学雑誌で発表する。
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