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被子植物の花粉管受精を革新した鍵分子モジュール群の駆動と創出の原理

公募研究

研究領域植物の挑戦的な繁殖適応戦略を駆動する両性花とその可塑性を支えるゲノム動態
研究課題/領域番号 23H04740
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅲ)
研究機関名古屋大学

研究代表者

武内 秀憲  名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (10710254)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
キーワード花粉管受精 / 先端成長 / 進化ゲノミクス / 被子植物 / 受容体 / キナーゼ / ゲノム重複
研究開始時の研究の概要

被子植物は、花粉管細胞の先端成長によって精細胞を卵細胞まで直接送り届ける生殖システム「花粉管受精」を進化させた。被子植物の成立時に、花粉管受精システムを駆動するいくつもの分子モジュールが革新したと考えられるが、鍵となった分子の正体はこれまで不明である。本研究では、花粉管の挙動調節の全てに関与する新規分子ファミリーの発見を糸口として、被子植物の花粉管が獲得した精密な分子機構を明らかにする。実験的アプローチと生物情報学的アプローチを相互に還元させた研究を実施し、両性花の生殖戦略を支える分子の機能と進化の実証的な研究モデルを提示する。

研究実績の概要

被子植物は、オスの花粉管細胞を先端成長させることで、雌しべの奥深くにある卵細胞へと精細胞を直接送り届ける「花粉管受精」の戦略を進化させた。この生殖の仕組みが成り立つためには、花粉管の「先端成長の促進(伸長/誘引)」と「堅さの調節(破裂制御)」の相反する制御が、バランスを破綻させることなく調整され続けることが必要である。本研究では、これら二つの制御に関わるものとして新規発見したPAONキナーゼファミリーに着目して、花粉管受精システムの鍵となる複数の受容体シグナリングのバランス調節機構と進化動態の理解を目指した。
本年度は、まずPAONsの多重変異体の解析を進め、シロイヌナズナでは11あるPAONsのうち5つのPAONsが、役割分担またはオーバーラップしながら伸長/誘引と破裂のそれぞれを制御していることが示唆された。次に、伸長/誘引および破裂制御のそれぞれに関わる受容体シグナリングとの関連を調べるため、タンパク質間相互作用をタバコのBiFC(二分子蛍光補完)法により調査したが、明確な相互作用を示唆する結果は得られなかった。また、蛍光タンパク質を融合させた機能的なPAON1およびPAON2の局在観察により、これらPAONは花粉管の先端部において、細胞膜タンパク質が細胞内へとリサイクリングされる領域に比較的強い局在を示した。これらの解析結果と他の予備実験の結果より、PAONsは受容体シグナリング構成分子との直接的な相互作用というよりも、これらの因子の局在制御に関わる別の因子を調節している可能性が示唆された。
PAONsを含む花粉管特異的な因子の発現が連動的に制御される仕組みを明らかにするため、エピゲノム動態に注目した解析に着手した。DNAメチル化やH3K9me2のマークの動態が発現制御の基盤になっている可能性が報告されていたため、これらマークを調節する因子の変異体の作出を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PAONsの機能分担や局在の把握を進めるため、PAON遺伝子を組み合わせで破壊した変異体への蛍光タンパク質遺伝子を融合させた各PAON遺伝子の導入など、次年度の解析に必要なリソースの整備を計画通り進めることができた。一部PAON1に関しては局在解析に着手し、花粉管の先端部ではなくsubapicalや側方部の細胞膜に動的に集積している様子を観察した。また、PAONsと花粉管の挙動を制御する受容体シグナリングの構成分子との相互作用解析(BiFC解析)を行ったが、相互作用を示唆するシグナルは検出されなかった。これらの結果から、PAONタンパク質は花粉管の挙動を制御する受容体シグナリング構成因子を直接制御しているというよりも、それらの活性や局在を調節する他の因子を制御している可能性が示唆された。情報科学的なエピゲノム解析に関しては予備的な解析にとどまったが、花粉管特異的な遺伝子群の発現制御に関わると予想されたDNAメチル化変異体の作出が計画通り進んだため、表現型解析による検証を次年度滞りなく進めることができる。

今後の研究の推進方策

蛍光タンパク質を融合させた各PAONの局在、paon変異体背景における各受容体シグナリング構成分子の局在およびその動態をライブイメージング解析する。PAON1に着目して、ドメインを欠損させた変異型PAON1を変異体に導入することで、花粉管の挙動のそれぞれの制御に各ドメインが果たす役割を調べる。また、花粉管制御リガンド(誘引ペプチドLURE1、破裂の誘導または抑制ペプチドRALFsなど)を添加した際の花粉管の応答性を解析することで、paon変異体の表現型から見出された伸長・誘引と破裂のバランス調節機構の実態と、関与する分子ダイナミクスを明らかにする。シロイヌナズナのエピゲノム解析データを用いて、花粉管特異的な因子群に注目してデータの再解析を進める。これに加えて、基部被子植物スイレンの花粉サンプルを集めてエピゲノム解析を実施し、花粉管特異的な因子群の発現制御機構の普遍性と進化を調べ、花粉管受精システムの創出に関わるゲノム動態を解析する。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] The Chaperone NASP Contributes to de Novo Deposition of the Centromeric Histone Variant CENH3 in Arabidopsis Early Embryogenesis2024

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Hidenori、Nagahara Shiori、Higashiyama Tetsuya、Berger Frederic
    • 雑誌名

      Plant & Cell Physiology

      巻: - 号: 7 ページ: 1135-1148

    • DOI

      10.1093/pcp/pcae030

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Transcriptomic landscape of seedstick in Arabidopsis thaliana funiculus after fertilisation2023

    • 著者名/発表者名
      Ferreira Maria Joao、Silva Jessy、Takeuchi Hidenori、Suzuki Takamasa、Higashiyama Tetsuya、Coimbra Silvia
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: -

    • DOI

      10.1101/2023.11.13.566818

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 重複遺伝子群の同時破壊を実現するCRISPR/Cas9システムの開発とシロイヌナズナ生殖遺伝子に対する実践的利用2024

    • 著者名/発表者名
      武内秀憲, 永原史織
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] シロイヌナズナPICALMによるVAMP72制御メカニズムの解析2024

    • 著者名/発表者名
      海老根一生, 藤本優, 室啓太, 武内秀憲, 野澤彰, 東出あんな, 植村知博, 澤崎達也, 東山哲也, 上田貴志
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Tip-localized receptor modules orchestrate pollen tube behavior in angiosperms2023

    • 著者名/発表者名
      Hidenori Takeuchi, Takuya T. Nagae, Miki Imoto, Nozomi Naiki, Shiori Nagahara, Kanako Bessho-Uehara, Tetsuya Higashiyama
    • 学会等名
      The 33rd International Conference on Arabidopsis Research (ICAR2023)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 助細胞における花粉管誘引シグナルの極性分泌ダイナミクスの解析2023

    • 著者名/発表者名
      永原史織, 丸山大輔, 東山哲也, 水多陽子, 武内秀憲
    • 学会等名
      日本植物学会第87回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 卵細胞外の斑点状構造はどのように形成されるか2023

    • 著者名/発表者名
      須崎大地, 大井崇生, 武内秀憲, 永原史織, 御調日向子, 杉直也, 木下哲, 丸山大輔
    • 学会等名
      日本植物学会第87回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] アブラナ科植物の花粉管誘導過程における異種と同種を見分ける認証機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      長江拓也, 武内秀憲, 永原史織, 水多陽子, 東山哲也
    • 学会等名
      日本植物学会第87回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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