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無脊椎動物免疫センサーTollによる自己免疫応答の分子機構と生理機能

公募研究

研究領域生体防御における自己認識の「功」と「罪」
研究課題/領域番号 23H04766
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅲ)
研究機関東京大学

研究代表者

三浦 正幸  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50202338)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
キーワードToll / ネクローシス / 自然免疫 / ショウジョウバエ / 遺伝学
研究開始時の研究の概要

TLRは自己免疫応答の重要なセンサーである。TLRの進化的プロトタイプであるTollはショウジョウバエから見出され、非感染性にもTollが応答することが判明した。しかし、その活性化様式は哺乳類TLRとは異なり、非感染時のToll制御システムは未解明である。本研究では獲得免疫を持たないショウジョウバエにおける自己に対する免疫応答の研究を行い、非感染時の自然免疫活性化機構の理解を深める。

研究実績の概要

Tollはショウジョウバエの自然免疫応答に関わる受容体で、ヒト自然免疫受容体TLRに先立って見出された。TLRは非感染時に内因性リガンドによって直接活性化されるが、Tollは感染時には体液でのセリンプロテアーゼカスケードが発動し、リガンドSpatzle(Spz)を切断し成熟させることによって活性化される。感染を伴わないネクローシス時においてもTollが活性化する現象を見出したが非感染時のToll制御システムは未解明であった。そこで、まず初めに非感染性のネクローシスを伴う組織傷害に応答したToll経路の活性化にSpzとその切断が必要であるかを、非切断型のspz変異体をゲノム編集によって作出し検討した。非切断型のspz変異体では、ネクローシスに応答したToll活性化が抑制されたため、感染時と同様にSpzの切断がToll活性化に必要であることが示された。そこで、ネクローシスに応じたSpz活性化に至るセリンプロテアーゼカスケードの検討を行い、遺伝子重複によって作られ隣接してゲノムに存在するPersephone (Psh)とHayanの両方がSpz切断の上流に位置することを明らかにした。さらにPshはネクローシスで生じる活性酸素によっって活性化されることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Spzの切断に至るセリンプロテアーゼカスケードの検討を行った。Persephone (Psh)は遺伝子重複によってHayanと隣接してゲノムに存在し、両者は放線菌やカンジダ属真菌感染において冗長的に働くToll経路の活性化に関わるセリンプロテアーゼである。HayanとPshそれぞれの変異体はネクローシスによるTollの活性化は抑制されなかったが、両方を欠損する変異体ではネクローシスに応答したToll活性化が抑制された。よって、これら近縁のセリンプロテアーゼが共にネクローシス時のToll活性化に必要であった。感染時にはセリンプロテアーゼModSPがHayan/Pshの上流で活性化されるが、ネクローシス時にModSPは必要ではなかった。このことから、Hayan/Pshがネクローシスを伴う組織傷害をModSP非依存的に活性化し、Spz切断を引き起こすことが示唆された。先行研究で、幼虫表皮の傷害部位で産生される過酸化水素がToll経路の活性化を誘導することが報告されていた。そこでSpzとPshをショウジョウバエの培養細胞で過剰発現し、培養液に過酸化水素を添加したところ、過酸化水素に依存して細胞内でSpzの切断が促進さた。ネクローシスを起こした翅上皮細胞では活性酸素種が認められた。よって、これらの結果は、Pshが過酸化水素の下流で活性化し、Spz切断カスケードを誘導する可能性を示唆している。

今後の研究の推進方策

ネクローシスを起こした翅で活性酸素種の産生が観察されたため、この活性酸素種がToll活性化に関わるのかを遺伝学的に検討している。過酸化水素の消去に働く酵素であるカタラーゼをアポトーシス不全個体の全身で過剰発現したところTollの活性化が減弱する傾向がみられた。これらの結果から、アポトーシス不全によるネクローシスを有する個体では、ネクローシス細胞で過酸化水素が産生され、それに応答したPshの活性化を起点として、Spz切断とToll経路の活性化が誘導される可能性が示唆された。今年度はネクローシス時のPsh/Hayanの活性化機構を遺伝生化学的に調べる。自然免疫応答は個体差の大きな生理的応答である。また、Tollの活性化と同時にその抑制も重要である。免疫応答の個体差や、Toll活性化制御機構をゲノムワイドに探索する目的でGWAS(Genome Wide Association Study)解析を導入する。ショウジョウバエは系統化された異なる遺伝的背景を持つ200もの野生型系統(Drosophila Genetic Reference Panel:DGRP)が整備され、個体レベルでの表現度制御機能をGWAS解析できるという大きな優位性を持つ。Toll活性化制御に関わる遺伝子のスクリーニングにはDGRP系統を用いたGWA mappingの手法を取り入れて行う。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Mating-induced increase of kynurenine in Drosophila ovary enhances starvation resistance of progeny2024

    • 著者名/発表者名
      Hikawa Naoto、Kashio Soshiro、Miura Masayuki
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 300 号: 3 ページ: 105663-105663

    • DOI

      10.1016/j.jbc.2024.105663

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Damage sensing mediated by serine proteases Hayan and Persephone for Toll pathway activation in apoptosis-deficient flies2023

    • 著者名/発表者名
      Nakano Shotaro、Kashio Soshiro、Nishimura Kei、Takeishi Asuka、Kosakamoto Hina、Obata Fumiaki、Kuranaga Erina、Chihara Takahiro、Yamauchi Yoshio、Isobe Toshiaki、Miura Masayuki
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 19 号: 6 ページ: e1010761-e1010761

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1010761

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Distinct stem-like cell populations facilitate functional regeneration of the Cladonema medusa tentacle2023

    • 著者名/発表者名
      Fujita Sosuke、Takahashi Mako、Kumano Gaku、Kuranaga Erina、Miura Masayuki、Nakajima Yu-ichiro
    • 雑誌名

      PLOS Biology

      巻: 21 号: 12 ページ: e3002435-e3002435

    • DOI

      10.1371/journal.pbio.3002435

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Early-adult methionine restriction reduces methionine sulfoxide and extends lifespan in Drosophila2023

    • 著者名/発表者名
      Kosakamoto Hina、Obata Fumiaki、Kuraishi Junpei、Aikawa Hide、Okada Rina、Johnstone Joshua N.、Onuma Taro、Piper Matthew D. W.、Miura Masayuki
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 7832-7832

    • DOI

      10.1038/s41467-023-43550-2

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] カスパーゼ生体機能の探索2023

    • 著者名/発表者名
      三浦正幸
    • 学会等名
      第31回日本Cell Death学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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