研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
23H04776
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 都 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (60622793)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | マクロファージ / 貪食 / 慢性炎症 / 炎症遷延化 / 死細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,死細胞自身が情報の発信源となって多彩な生体応答を誘導することが明らかになり,非感染性炎症の慢性化における細胞死の意義が注目を集めている。ネクロプトーシスやフェロトーシスなどの様々な新たな細胞死様式が報告され,細胞死の分子機構は明らかになりつつある一方で,死細胞がどのように処理されるかは不明な点が多い。特に,マクロファージが死細胞を認識し,貪食した後の消化スピードや死細胞の運命についてはほとんど分かっていない。本研究では,死細胞クリアランス不全がもたらす炎症慢性化機構の解明を通して,死細胞貪食の重要性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
死細胞クリアランス不全がもたらす炎症慢性化機構の解明を目的として,本年度,以下の検討を行った。 1)死細胞クリアランス評価系の構築:申請時に記載した通り,死細胞として培養細胞を用いて検討したところ,培養細胞を死細胞として用いるためには,100%の死細胞誘導効率が必要であり,死細胞誘導に難渋した。そこで,死細胞を胸腺細胞へと変更し,胸腺細胞に量子ドットを取り込ませ,細胞死を誘導後,pH応答性蛍光色素で染色し,腹腔内マクロファージを用いて貪食実験を行った。その結果,胸腺細胞への量子ドット取り込み率が低いこと,フリーの量子ドットをマクロファージが貪食することが明らかになり,現在,改善を試みている。一方,既存の評価系を用い,老齢マウスや糖尿病マウス由来マクロファージの貪食能を検討したところ,老齢マウス,糖尿病マウスでは,対照マウスに比較して,マクロファージ貪食能が低下することが分かった。 2)死細胞クリアランス不全のメカニズム解明:貪食シグナルに着目し,種々の薬剤や遺伝子改変マウス由来マクロファージを用いてマクロファージの貪食能を検討した。その結果,貪食抑制作用のある分子,貪食促進作用のある分子など,いくつかの分子を見出した。現在,その詳細を検討している。さらに,貪食亢進を期待して,遺伝子改変マウスを作出し,マクロファージ貪食能を検討した。その結果,期待した通りに,貪食能が亢進した。また,共同研究者と共に,リソソームのpH計測プローブの開発を開始した。リソソーム機能障害とpHの関係を今後詳細に検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「量子ドットとpH応答性蛍光色素を用いた消化スピードの計測」を行う中で,仮説通りに進まない思わぬ困難にぶつかったが,代替案を含め,打開策を鋭意検討中である。共同研究者に助言を仰ぎながら,1年目の遅れを2年目の早い段階で取り戻したい。一方で,予想に反する興味深い結果を得ることができ,研究の幅が広がっている。本研究課題は,マクロファージの貪食に焦点を当てているが,加齢や種々の病態とマクロファージ貪食がどのように関わっているのか,に最も重きを置いている。1年目で加齢や病態でのマクロファージ貪食能低下を確認することができ,2年目への大きな進捗となった。また,貪食亢進を期待して作出した遺伝子改変マウスにおいて,確かにマクロファージ貪食能の亢進が認められた。本マウスを用いて,種々の病態モデルを作製し,病態と貪食との関連をより詳細に検討していきたい。さらに,2年目は,RNA-seq解析などを採用し,加齢や病態におけるマクロファージの質的変化に着目していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に,1年目の課題と2年目の課題を設定したが,既に開始している2年目の課題があると同時に,1年目の課題を残している。まず,1年目に終えられなかった「量子ドットとpH応答性蛍光色素を用いた消化スピードの計測」を,早急に進めていきたい。申請時には,死細胞として培養細胞を用いる予定にしていたが,初代培養細胞など,種々の細胞を対象として進める。また,基本的にマクロファージの貪食能に主眼を置いているが,他の細胞の貪食能にも着目したい。Mincleの内因性リガンド産生機構については,現在,着目した分子の遺伝子改変マウスで検討を進めており,2年目のうちに論文投稿を考えている。「研究実績の概要」にも記載したが,新たにリソソームpH計測プローブの開発を開始した。リソソーム機能障害とpHなどにも着目し,貪食能との関係を詳細に検討したい。また,「現在までの進捗状況」にも記載したが,2年目は,RNA-seq解析を取り入れて,貪食に関わるシグナルや分子を抽出していきたい。
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