研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
23H04784
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
柴田 健輔 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50529972)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 共生微生物 / T細胞 / 代謝産物 / 自己免疫性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
自己、非自己の識別は、免疫制御に必須の役割を担う。例えば、非自己と認識された病原微生物は、免疫システムにより排除される。一方我々は、腸管では微生物は自己として認識し、共生する戦略をとってきた。しかし、その生体における役割は不明な点が多く残されている。近年申請者は、共生微生物由来代謝産物が自己免疫性疾患の病態制御に関わることを明らかにしている。そこで本研究では、その詳細なメカニズムを明らかにし、疾患の予測や治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
共生微生物由来代謝産物を認識するMR1T細胞がどのように視機能保護に関わるのかを明らかにするため、研究を進めている。進捗状況について、以下にその概要を示した。 1) MR1T細胞が認識する共生微生物由来代謝産物の同定 自己免疫性ぶどう膜炎マウスモデル において、MR1T細胞が抗原認識を介した活性化が視機能保護に関わることを見出した。さらに研究を進めた結果、MR1T細胞が認識する抗原が糞便中に存在することを明らかにした。そこで本年度は、糞便から認識抗原を同定するために、高速液体クロマトグラフィーを用いて、粗分画の作成方法の樹立を検討した。 2) シングルセル・空間トランスクリプトーム解析による機能制御機構の解明 自己免疫性ぶどう膜炎マウスモデルでは、視機能に直接関わる網膜に炎症が惹起され、視機能が低下する。これまで研究代表者は、MR1T細胞存在下で、その炎症の軽減と視機能保護が認められることを明らかにしている。本年度は、同モデルを用いて、まずMR1T細胞依存性に眼組織で発現上昇する遺伝子群の同定を試みるため、RNA-seq解析を行った。その結果、MR1T細胞存在下で優位に発現が上昇する遺伝子群を同定した。次に、網膜組織で特異的にMR1T細胞依存性に発現上昇する遺伝子をさらに絞り込むため、眼組織の空間トランスクリプトーム解析を行った。その結果、視神経細胞の増殖や機能制御に関わる遺伝子を同定した。また同解析でMR1T細胞が網膜組織に局在していることも明らかにした。さらに単細胞レベルでのMR1T細胞やその近傍に存在する細胞の位置情報を明らかにするため、多重免疫染色法による解析も行った。また、MR1T細胞の機能を明らかにするため、シングルセル解析のための条件検討を行い、網膜からの細胞準備方法を樹立し、データ取得の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) MR1T細胞が認識する共生微生物由来代謝産物の同定 共生微生物由来代謝産物の同定法の樹立をほぼ終了しており、当初の計画通り進んでいる。 2) シングルセル・空間トランスクリプトーム解析による機能制御機構の解明 2023(令和5)年度に予定していた空間トランスクリプトーム解析は全てデータ取得済みであり、現在その解析が進行中である。シングルセル解析は、細胞準備方法の予備検討を終え、データ取得の準備を進めている。このように、いずれの解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024(令和6)年度推進する2つの研究課題を以下に示した。 1) MR1T細胞が認識する共生微生物由来代謝産物の同定 2023(令和5)年度に樹立した糞便サンプルの粗分画を用いて、MR1T細胞認識抗原の同定を行う。そのために、MR1T細胞受容体を発現し、抗原認識に伴いGFPを発現するレポーター細胞を用いてスクリーニングする。活性が確認できた分画は、高感度質量分析装置や核磁気共鳴装置を用いて活性化合物の有無や構造を調べる。同定されたMR1T細胞認識抗原は、マウス由来のMR1T細胞や、前述のレポーター細胞を用いて刺激活性を調べる。次に、そのMR1T細胞認識抗原の生体での役割を明らかにするため、自己免疫性ぶどう膜炎発症マウスの硝子体中に投与することで視機能保護効果を有するのかを検証する。 2) シングルセル・空間トランスクリプトーム解析による機能制御機構の解明 2023(令和5)年度に、空間トランスクリプトーム解析に必要なデータを取得した。そこで2024(令和6)年度は、それらのデータを用いて、MR1T細胞が、どの細胞と相互作用して視機能保護に関わるのかについて解析を進める。さらに、MR1T細胞の機能を明らかにするため、シングルセル解析を行う。そのために、網膜や所属リンパ節からMR1T細胞を精製し解析に用いる。それにより、MR1T細胞の機能や、抗原認識に伴うクローン増殖の有無を検証する。
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