研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
23H04788
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 大輔 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (40612130)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | γδT17細胞 / 腸内細菌 / 腸恒常性 / 共生関係 / 自己免疫疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
以下の2点より、γδT細胞が腸内細菌と宿主の共生関係構築において果たす役割の功罪の両面を解明する。 1 パイエル板Vγ6+γδT17細胞が認識する腸内細菌種とその脂質抗原を探索・同定し、Vγ6+γδT17細胞による宿主と腸内細菌共生関係の成立・維持への貢献を検証すること。 2 Vγ6+γδT17細胞が認識する脊髄の脂質抗原を探索・同定するとともに、Vγ6+γδT17細胞が神経炎症性の機能を獲得するメカニズムと役割を明らかにすること。
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研究実績の概要 |
宿主は腸内細菌を『自己』の一部と認識し、個体毎に異なる腸内細菌叢を維持している。共生関係を構築する上で、CD4陽性T細胞によるMHCクラスとペプチド抗原の認識が重要であり、『自己』である腸内細菌を排除しないように免疫応答を調整する。しかし、この調整機構が毀損すると、腸内細菌に対する炎症応答に至る。腸内細菌抗原と宿主抗原が類似している場合、この炎症は自己免疫応答のリスクを含む危険なものとなる。従って、宿主は他にも共生関係を担保する仕組みを発達させてきたことは十分想定できる。本研究は、その候補としてγδT細胞による腸内細菌脂質抗原の認識に着目する。γδT細胞が腸内細菌を『自己』の一部と認識する上でどのように貢献しているのかを解明するとともに、その破綻にも焦点を当てて、腸内細菌との共生関係という視点でのγδT細胞の包括的な理解を目指している。2023年度は以下の項目を実施した。 1. シングルセルトランスクリプトーム解析とシングルセルTCRレパトア解析により、正常時のマウスのパイエル板とEAE初期の脊髄のVγ6+γδT17細胞の性状とクロノタイプを同定した。 2. Vγ6+γδT17細胞が認識する抗原探索のために、T細胞リンパ腫細胞株BW5147 (Nur77-Egfp発現)に、Vγ6+γδT17を発現させた細胞株を作成した。この細胞株は用いて既知の抗原で刺激したところ、良好な反応性を示した。 3. 抗菌スペクトルの異なる複数の抗菌剤をマウスに単剤投与し、異なる腸内細菌叢を持つマウスを作出し、パイエル板Vγ6+γδT17細胞の増減を解析した。さらに腸内細菌叢解析から、γVγ6+γδT17細胞の分化に重要な菌種を複数同定した。 4. Vγ6+γδT17細胞が宿主と腸内細菌叢の共生関係の成立・維持への貢献を検証するために、γδ欠損マウスの腸内細菌叢解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、上記に記載した通りの成果を得ている。これは、当初の研究の研究計画に沿ったものである。一部未実施の項目があるので次年度の実施する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の項目を実施する予定である。 1. 小腸粘膜固有層のVγ6+γδT17細胞がパイエル板由来かを検証するため、KikGR-Tgマウスを利用する。KikGR-Tgマウスは、目的の組織に青色光を照射することで、その組織中の細胞のみを光転換により赤色に蛍光標識することが可能である。パイエル板の細胞を標識し、24時間後および48時間後に小腸粘膜固有層の細胞を単離し、光転換した赤色の (すなわちパイエル板由来の)Vγ6+γδT17細胞の割合をフローサイトメトリーで解析する。 2 Vγ6+γδT17細胞が宿主と腸内細菌叢の共生関係の成立・維持への貢献を検証するために、Vγ6欠損マウスを利用する。以下の項目について解析し、野生型マウスと比較して解析結果を総合的に評価する。 3. Vγ6+γδT17がEAEの発症に果たす役割を解明するため、Vγ6欠損マウスにEAEを発症させ、病態スコアを評価する。また、パイエル板のVγ6+γδT17をセルソーターで単離し、EAEを誘導させる免疫を施した直後にマウスに移入し、移入後の遺伝子発現変化や、レシピエントの病態スコアを評価する。なお対照として脾臓や末梢リンパ節のVγ6+γδT17を用いて比較する 4. Vγ6+γδT17を発現させた細胞株を用いて、腸内細菌由来の抗原を同定する。
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